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持続型インスリン、デテミルとグラルギンの違いは?(前編)
持続時間は互角といえるか

 「インスリンのグラルギンとデテミル、どっちがいい?」

 約1年前に、このような書き出しの記事を書いた。しかし、当時はまだ日本ではデテミルは発売されておらず、欧州糖尿病学会の発表に対する速報という形での記事だったので、現実感はなかったかもしれない。

 12月14日、持続型インスリン製剤「インスリンデテミル」(商品名レベミル)が発売された。一方、「インスリングラルギン」(商品名ランタス)も、これまで注射器の不具合がきっかけで新規の患者への処方がストップしていたが、10月にカートリッジ交換式の新しい注射器の供給が開始され、新規処方が可能になった。

 このため、1型糖尿病患者や重症の2型糖尿病患者だけでなく、中等症や比較的軽症な2型糖尿病患者にも、基礎インスリンとして処方する機会が増えるだろう。両薬剤を自由に選択できるようになったことで、両者の違いについて患者から説明を求められることも多くなりそうで、上記の疑問は現実味を帯びてくる。

 そこで今回、この問いかけに対する考え方について、改めてまとめてみた。薬理学的な観点や患者にとっての使いやすさなど、様々な観点から両者の特徴について、現状のデータを集め、専門家の意見などを聞いた。


【持続時間】
 持続型インスリンに求められるのは、言うまでもなく、長時間にわたって同じ程度に効果が持続する能力だ。効果が24時間持続すれば、またピークが小さければ、注射は1日1回でよくなり、患者にとっての利便性は向上する。この点について、グラルギンとデテミルの、中間型インスリンNPH)に対する優位性は明らかとなっている。では、両薬剤の違いはどれくらいあるのか。

前回の記事では、学会で発表された1つのクランプ試験(被験者の血糖を一定に保つために必要なグルコース注入率を調べ、インスリンの効きめをみる試験)の結果を取り上げた。それによれば、グラルギンの効果は24時間以上持続したのに対し、デテミルは17.5時間しか持続しなかった(論文上の値)。しかし、他の複数のクランプ試験と合わせて見ると、これが必ずしも両者の薬効プロファイルを反映したものとは言い切れないようだ。

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