在宅医療は、終末期のケアや看取り抜きには語れない。特に癌患者の看取りでは、麻酔薬の使い方やコメディカルとの密な連携など、在宅医の腕の見せどころがたくさんある。
一般に癌の患者は在宅医療を提供し始めてから経過が早い。病院で打つ手がなくなってから在宅に移行する例がほとんどだからだ。
鈴木内科医院(東京都大田区)副院長の鈴木央(ひろし)氏の場合は、病院から紹介を受け、訪問診療を始めてから亡くなるまで、半分が1カ月。残りの半分が2~3カ月という具合だ。患者が在宅に移行する際には、可能であれば介護保険を申請し、ケアマネジャーと連携して、ベッドやマットレスの用意、さらにホームヘルパーの手配などを行う。
訪問診療は、初めは週に2~3回のペースで行う。この時期の医師の仕事は、家族との信頼関係の構築や疼痛コントロールが主になる。患者家族の悩みに耳を傾けながら、患者がこの先どのような経過をたどるのか、臨終の際には家族はどういった対応をとればいいのかを教えるのも、医師の重要な役割だ。
訪問看護は、週2~3回のペースで行う。バイタルチェックをして、不快な症状がないか、褥瘡はないかなどをチェックしてもらう。鈴木氏の場合は、訪問診療は自院の看護師と行き、訪問看護は外部の訪問看護ステーションに週2回ほど依頼。薬については、夜間に対応している薬局が近隣にないため院内処方にしている。
最期の1週間は、状態が刻々と変化し、家族も不安になるので、毎日訪問診療を行う。さらに、昼の訪問診療に加えて、夜の往診も適宜行う。
鈴木氏は「夜にもう一度行っておくと家族が安心するし、深夜の呼び出しも少なくなる」と説明する。なお、患者1人に対する1回の診療時間は、診察や診療所と患者宅を往復する時間、カルテを書く時間などを含めて、全部で1時間くらいという。
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