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Lancet誌から
ARBとACE阻害薬の併用は腎機能を低下させる
ONTARGET試験の結果から

アンジオテンシン受容体拮抗薬ARB)とアンジオテンシン転換酵素ACE阻害薬蛋白尿を改善することは知られている。これらを併用すれば、さらに高い効果が得られるだろうか。ONTARGET試験の参加者を対象に、これら2剤を併用した場合の腎機能に対する影響を調べた結果、2剤をフルドーズで併用すると、単剤投与に比べ、蛋白尿の進行は有意に抑制されるが、透析導入、血清クレアチニン値の倍化、死亡からなる複合イベント発生リスクは有意に上昇することが示された。ポーランドGrochowski病院のJohannes FE Mann氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年8月16日に掲載された。

 先に行われたメタ分析では、ACE阻害薬とARBを併用すると、それぞれ単剤で用いた場合よりも蛋白尿の改善が大きいと報告されている。蛋白尿の改善は慢性腎不全の予防において重要だが、分析対象となった個々の研究は、登録者数が少ない上に、試験期間1年未満がほとんどで、腎機能の指標である糸球体濾過率の変化や、透析導入の有無などについては情報が提供されていないという問題点もあった。また、ARBとACE阻害薬を併用すると、それぞれを単剤投与した場合に比べ、急性腎不全と高カリウム血症を含む有害事象が増える可能性がある。

 そこで大規模な集団を対象とする直接比較が必要だと考えた著者らは、ACE阻害薬のラミプリルとARBのテルミサルタンをそれぞれ単独で、またはフルドーズで併用したONTARGET試験の登録者を対象に、これら薬剤の腎臓に対する作用を評価した。

 ONTARGET試験は、2001~2007年に、55歳以上のアテローム性動脈硬化症(冠疾患、末梢血管疾患、脳血管疾患)または臓器障害のある糖尿病の患者を対象に行われた。3週間のランイン期間を経て、2万5620人の患者を無作為にラミプリル10mg/日(8576人)またはテルミサルタン80mg/日(8542人)、これら2剤を併用(8502人)に割り付けた。追跡期間の中央値は56カ月だった。

 血清クレアチニンは、ランイン期間の前、割り付けから6週後、2年後、試験終了時に測定。これを基に推定糸球体濾過率(eGFR)を算出した。尿中アルブミン/クレアチニン比も同様に測定した。3.4mg/mmol以上~33.9mg/mmol未満を微量アルブミン尿症、33.9mg/mmol以上をマクロアルブミン尿症とした。腎機能に関する主要エンドポイントを、あらゆる透析の導入、血清クレアチニン値の倍化、死亡の3つを合わせた複合イベントに設定した。分析はintention-to-treatで行った。

 ベースラインの血清クレアチニン値の平均は93.7μmol/L、eGFRの平均値は73.6mL/分/1.73m2だった。

 複合イベントの発生は、ラミプリル群1150件(13.5%)、テルミサルタン群は1147件(13.4%)で、ラミプリル群と比較したハザード比は1.00(95%信頼区間0.92-1.09)と差はなかった。しかし併用群では1233件(14.5%)発生しており、ハザード比は1.09(1.01-1.18、P=0.037)とリスク上昇は有意だった。

 2次アウトカムに設定された、透析導入または血清クレアチニン値の倍化も、ラミプリル群174件(2.03%)、テルミサルタン群189件(2.21%)で、ハザード比1.09(0.89-1.34)と差なし。しかし併用群では212件(2.49%)、ハザード比1.24(1.01-1.51、P=0.038)と有意に多かった。

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