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Lancet誌から
心筋梗塞リスク指標としてApoB/ApoA1比が有用
非空腹時のApoB/ApoA1比はコレステロール比に優る

 急性心筋梗塞リスクの指標として、コレステロール値またはそれらの比よりも、アポリポ蛋白質B100ApoB)/アポリポ蛋白質A1ApoA1)比の方が有用であることが示された。カナダMcMaster大学のMatthew J McQueen氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年7月19日号に掲載された。

 ApoBはLDLの輸送蛋白質で、アテローム生成誘発の指標だ。HDLの代謝にかかわるApoA1は、これを阻止する役割を担う。これまで、ほとんどのガイドラインが、コレステロールを指標とするアプローチを推奨しており、日常診療においてアポリポ蛋白質が顧みられることはなかった。最近になって、ApoBとApoA1が、それらを構成成分として含むLDL、HDLよりマーカーとして有効かどうかに関する議論が行われるようになった。しかし、マーカーとしてのそれらの有効性を厳格に比較した研究はなかった。

 著者らが先に行ったINTERHEART研究は、喫煙、運動、野菜と果物の摂取、飲酒、高血圧、糖尿病、腹部肥満、心理社会的状態、ApoB/ ApoA1比、という9つの修正可能な危険因子によって、心筋梗塞の人口寄与リスク(PAR)のほとんどが説明できることを明らかにした。特にApoB100/ApoA1比のPARは約50%と報告されている。

 今回、著者らは、INTERHEART研究に参加した人々を対象に、急性心筋梗塞リスクの指標として、アポリポたんぱく質とコレステロールのどちらが有用かを比較する大規模な標準化ケースコントロール研究を実施した。

 アジア(中国、南アジア、その他(マレーシア、フィリピン、日本など))、欧州系(中央ヨーロッパ、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、北米、オーストラリア、ニュージーランド)、中東(アラブ/ペルシャ)、アフリカ(黒人、混血黒人)、南米の52カ国、262医療機関で、症状発現から24時間以内に専門病棟に入院した初回急性心筋梗塞の患者1万2461人と、これらの患者と性別と年齢(±5歳)がマッチする心疾患ではない1万4637人を分析対象にした。

 非空腹時血液標本が利用できたのは、ケース9345人(女性が2209人)、コントロール1万2120人(女性が2937人)だった。総コレステロール、HDL-c、非HDL-c、ApoB、ApoA1を測定、ApoB/ApoA1比、総コレステロール/HDL-c比、非HDL-c/HDL-c比を計算した。これらの比はいずれも、数値が高いほど急性心筋梗塞のリスクが高いことを意味する。リスクが高かったのは、南アジア、アラブ/ペルシャ、南米の人々。低かったのは中国、アフリカ黒人だった。

 非HDL-c/HDL-c比は、総コレステロール/HDL-c比と互いに1次変換されるため、以後は総コレステロール/HDL-c比のみをApoB/ApoA1比と比較した。

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