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Lancet誌から
多剤併用療法導入でHIV感染者の平均余命は13年延長
注射薬物使用による感染者とCD4数が少ないグループは延長幅が小さい

 1996年に導入された抗HIV薬多剤併用療法は、感染者に、生存期間延長と生活の質の向上をもたらした。欧州と北米で行われた共同研究Antiretroviral Therapy Cohort Collaborationに参加した研究者たちが、1996年以降に多剤併用療法を開始した高所得国のHIV-1感染者の死亡率と平均余命の変化を調べたところ、全体として余命が延長していることが明らかになった。しかし、注射薬物使用による感染者と、ベースラインのCD4数が少ないグループでは、延長幅が小さいことも明らかになった。詳細は、Lancet誌2008年7月26日号に報告された。

 多剤併用療法は改良が進んでおり、有効性と忍容性が向上している。臨床試験や観察研究では、多剤併用によって感染者の死亡率と合併症罹患率が低下したと報告されているが、平均余命に対する影響は明らかではなかった。そこで著者らは、高所得国において、1996~1999年、2000~2002年、2003~2005年の3期間に多剤併用療法を開始したHIV-1感染者の死亡率と平均余命の変化を比較することにした。

 Antiretroviral Therapy Cohort Collaborationは、16歳以上で、多剤併用療法開始前に抗ウイルス薬投与歴がなかったHIV感染者100人以上を登録したコホート研究のデータを登録している。

 今回、分析対象となったのは、14件のコホート研究に参加し、条件を満たした感染者だ。多剤併用療法開始時期が1996~1999年の感染者は1万8587人、2000~2002年が1万3914人、2003~2005年は1万854人(計4万3355人)だった。グループごとに簡易生命表を作製し20歳と35歳の時点の平均余命を計算した。粗死亡率、20~64歳のPYLL(potential years of life lost:潜在的余命損失年数)も計算した。

 試験期間中に2056人(4.7%)が死亡していた。粗死亡率は、1996~1999年は1000人-年当たり16.3(95%信頼区間14.9-17.8)だったが、2003~2005年には1000人-年当たり10.0(9.3-10.8)に減少していた。PYLLも、1996~1999年は1000人-年当たり365.9年、2003~2005年は189.4年と、顕著に低下していた。

 また20歳時の平均余命は、約13年延長しており、36.1年から49.4年になっていた。35歳時の平均余命も25.0年から37.3年に延長していた。

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