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科学的に信用を示せるか?―漢方薬の品質管理の資料を検証してみた

2008/09/12

 福田首相が退陣を表明して、次に誰が自民党のトップになるのか混戦中の政界ですが、ギョーザ事件はどうなっていくのでしょう。

 北京オリンピック開幕直前の8月6日、中国外務省は「中国国内で6月中旬にギョーザ中毒事件が起きていた」と中国内での冷凍ギョーザの流通や中毒発生を認める表明を行いました。その後は事態の進展を耳にしませんが、この食品汚染問題は一種の国際問題として誰が首相になっても、きちんとした総括が必要になるはずです。

 ところで、少し前にこのブログに「ギョーザ事件と四川大地震と漢方薬」というコラムを書きました。この記事で話題にしたのは漢方薬の安全性ですが、先日漢方薬の安全性についてのパンフレットを持参してくれた漢方薬メーカーのMR氏の再来訪を受けました。前に頼んでいた「漢方薬の安全性についてもっと詳しく記している資料はないのか?」というわがリクエストに応えてのことです。

 四川大地震後に漢方薬メーカーから配られたパンフレットの「これからも漢方製剤の製造及び品質は全く問題ありません」という文言を信用しないわけではありませんが、やはり自分も服用している漢方薬、しかも自分だけでなく患者さんにも処方している薬ですから、この機会にもう少し詳しく勉強してみたいと思ったのです。

 MR氏からいただいた資料で知ったにわか蘊蓄(うんちく)を披露しますと、例えば麻黄湯(マオウトウ)や麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)などの漢方薬に含まれている最もポピュラーな生薬に麻黄がありますが、薬用とされる麻黄の種類も3~4種類あります。

 草麻黄(ソウマオウ)・中麻黄(チュウマオウ)・木賊麻黄(モクゾクマオウ)の薬草断面図や顕微組織図は、それぞれ素人目にもずいぶん異なりますし、その成分であるエフェドリンやプソイドエフェドリンの含有量を表す棒グラフも、これらの生薬がずいぶん違った量や組成であることを示しています。

 漢方薬メーカーは、これらの特性を踏まえた上で、中国や韓国や日本の農家と契約して栽培してもらうそうです。このときに問題となるのは、その効果を生む生薬の成分そのものと、このところ食品偽装、食品汚染でも議論になっている「不純物」や「農薬」などのコンタミネーションの有無です。

 生薬栽培に農薬は使用を控える方針とのことですが、近代農業一般の習いで、生産性を上げるためにはどうしても農薬の使用にドライブがかかる傾向にあります。今なおギョーザ事件の真相は不明ですが、これまでの疑惑の中で多量の残留農薬の存在も疑われました。やはり残留農薬をしっかりチェックして、生薬の品質管理を強化すべしということになります。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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