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Lancet誌から
カンデサルタンが網膜症予防に一定の効果
1型・2型糖尿病患者を対象としたDIRECT試験の結果

 糖尿病性網膜症を予防するには厳格な血糖管理が必要だが、実践は容易ではない。これまでに行われた研究で、レニン・アンジオテンシン系阻害薬が糖尿病性網膜症の予防に有効である可能性が示されていたが、網膜症を主要エンドポイントとして評価した研究はなかった。そこで著者らは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)のカンデサルタンが糖尿病患者の網膜症に与える影響に焦点を当てたDIRECT試験を実施した。この結果、主要エンドポイントは達成できなかったものの、カンデサルタンは一部の患者に有効であることが示唆された。

 DIRECT試験は、3件の無作為化二重盲検試験からなる。1型糖尿病患者の網膜症罹患について評価したDIRECT-Prevent 1と、1型患者の網膜症進行について評価したDIRECT-Protect 1の詳細は、英ロンドンImperial College Healthcare NHS TrustのNish Chaturvedi氏らにより、Lancet誌2008年10月18日号に報告された。

 一方、2型糖尿病患者の網膜症の進行について評価したDIRECT-Protect 2の結果は、デンマークOdense大学病院のAnne Katrin Sjolie氏らにより、やはりLancet誌2008年10月18日号に報告されている。

 これら3件の無作為化試験は、世界の309医療機関で行われた。2001年8月に割り付けを開始し、最後の評価は2008年3月に終了した。追跡期間の中央値は、DIERECT-Prevent 1が4.7年、DIERECT-Protect 1が4.8年、DIRECT-Protect 2は4.7年。

 糖尿病性網膜症の重症度は、Early Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)スケールを用いて評価した。ETDRSスケールは、7フィールドステレオ眼底撮影に基づいて網膜症の程度を判定するもので、数値が増えるほど重症度が高くなる。10は網膜症なし、53は重度網膜症、61、65、71、75、81は増殖性の網膜症と判断される。重症度は片眼ずつ判断されるため、10/10は両眼ともに網膜症なしを意味する。

 DIERECT-Prevent 1は、年齢が18~50歳、糖尿病歴1~15年で、血圧、尿中アルブミン値ともに正常、網膜症に罹患していない(ETDRSスケールが10/10)1型糖尿病患者を登録。711人(平均年齢29.6歳)をカンデサルタン16mg/日に、710人(29.9歳)を偽薬に割り付けた。

 DIRECT-Protect 1は、年齢が18~55歳、糖尿病歴1~20年で、血圧、尿中アルブミン値ともに正常な網膜症患者を登録。網膜症の重症度は、ETDRSスケールが20/10(片眼のみ軽度で非増殖性)から47/47(両眼ともに中高度で非増殖性)までとした。951人(31.5歳)をカンデサルタン16mg/日、954人(31.9歳)を偽薬に割り付けた。

 DIRECT-Protect 2は、年齢が37~75歳、糖尿病歴1~20年で、尿中アルブミン値は正常、血圧も正常または降圧治療を受けている、網膜症(ETDRSスケールは20/10から47/47まで)のある2型糖尿病患者を登録。951人(56.8歳)をカンデサルタン16mg/日、954人(56.8歳)を偽薬に割り付けた。

 すべての試験で割り付けから1カ月後にカンデサルタンを32mg/日に増量。網膜症の検査は割り付けから6カ月後、1年後、その後1年ごとに実施した。

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