日経メディカルのロゴ画像

北海道ローカル局に、このサイトでおなじみの顔

2008/10/28

 月が10月に変わったその日の朝のことでした。外回りで若干時間が空いたので、一休みに出先でテレビを見せていただきました。

 フジテレビ系列のUHB(北海道文化放送)の「のりゆきのトークDE北海道」が放映中でしたが、キャスターの佐藤のりゆき氏とアナウンサーの水野悠希さんが、「なんてこったもう病院に行けない?医療費抑制・医師不足医療崩壊を救うのは…埋蔵金か?」という特集の内容を紹介したあとで、画面に登場したゲストの顔ぶれを見てびっくりしました。

 なんと小沢遼子さん、金美齢さんといった評論家の横に、日経メディカルブログで医療改革を一生懸命に訴えておられる本田宏先生が並んでいるではありませんか。

 話題は、先にあげた医療崩壊とその対策についてですが、これら3人の論客に、日ごろから社会問題に対して積極的に疑問を投げかけていく佐藤のりゆき氏が「北海道の医療はこれが問題です」「どうすれば医療崩壊を防げるか」とさまざまな論点をゲストにぶつけていきます。

 小沢遼子さんと金美齢さんというと、政治色の強いテーマならば左右に割れそうな布陣ですが、こと医療となるとそれほど認識にギャップはなさそうで、コメントをお互いにフォローするかのように紡いでいかれます。

 その間本田先生は、「医療スタッフの逼迫が、いかに医療現場に厳しい状況を生み出していることか。医療従事者の増員だけでなく、医療費をしっかりと投入しないと、われわれの社会のセーフティネットは十分に機能しない」とブログでいつも一生懸命に訴えておられるように、熱いメッセージを視聴者に送っていました。

 番組では、もっぱら当地北海道の医療をめぐる状況を材料に議論を進めていましたが、ここで私の目から見た北海道の状況を再確認してみます。

 まず、北海道は広大な面積に500万あまりの人がちらばっているので、医療的なフォローは非常に大変です。医師数の比率は、全国レベルを満たすことができていますが、その多くは札幌市など都市部に集中し、郡部などの僻地は厳しい医師不足に悩んでいます。

 また、地方の人口は高齢化、過疎が急速に進んでいますから、医療や介護が弱いと、その地域に住み続けること自体が非常に困難となります。さらに、高齢者だけでなく、若者も出産できる病院が少ない、育児に必要な小児科インフラが弱いと、ここでがんばろうという気持ちはあっても子供のことを考えると、札幌などの都会に移り住むしかないか、となります。

 医師数も一応それなりの数がいるとはいえ、北大、札幌医大、旭川医大と3校しかない医学部を卒業して、大学に残る、地元に残るという研修医は、なかなか高い比率にはなりません。将来的に、あるいは科によっては今すぐに、専門家の不足が懸念されるということになります。多くの内科医が離脱した道北の基幹病院では、地域で膠原病外来を担当する専門医が不在となり、膠原病の患者さんが難病難民化で苦労していると報じられました。

 このように書き連ねた当地の医療の困難について、私もいつも考えてはいますが、特効薬のようなものはなかなかすぐには頭に浮かんできません。

 少子高齢化は日本全国で見られる現象ですが、北海道の場合は、冒頭にも述べたように面積の広大さから、なかなか医療機関の集約化や効率化ではしのぐことは困難です。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

この記事を読んでいる人におすすめ