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NEJM誌から
チオトロピウムは肺機能を改善するがFEV1低下率は不変
中~最重症COPD患者を対象としたUPLIFT試験の結果

 長時間作用型抗コリン薬チオトロピウムの慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する長期的な影響を評価する大規模臨床試験、UPLIFT試験の結果が明らかになった。4年間の投与で、主要エンドポイントに設定したFEV1(1秒量)の年間低下率には有意な改善を見なかったが、FEV1値、FVC(努力肺活量)値で表される肺機能は、偽薬群に比べて有意に高い状態が持続し、QOLの向上も続くことを明らかにした。米UCLAのDonald P. Tashkin氏らが、NEJM誌2008年10月9日号に報告した。

 これまで、COPD患者において、病気の進行の指標となるFEV1が時間経過と共に低下する現象を遅らせることに成功した薬物療法はなかった。FEV1低下率を緩やかにできることが証明されているのは禁煙のみだ。

 チオトロピウムをCOPD患者に6週から12カ月投与したこれまでの研究では、多様なエンドポイントに改善が見られている。なかでも、1年間の無作為化試験の後ろ向き解析でチオトロピウムのFEV1低下抑制効果が示唆されたことから、著者らは、より長期的で大規模な二重盲検の無作為化試験UPLIFTを計画、実施した。

 37カ国の490医療機関で、2003年1月から2004年3月の間に患者を登録、2008年2月まで追跡した。

 対象は、COPDと診断されており、40歳以上で、喫煙歴が10pack-years以上、気管支拡張薬投与後のFEV1が予測値(年令・性別・身長から算出)の70%以下、FEV1/FVC×100(1秒率)が70%以下という中~最重症の患者。

 5993人(平均年齢65歳、75%が男性、30%が喫煙者)を登録し、無作為に吸入チオトロピウム18μg/日(2987人)または偽薬(3006人)に割り付けた。

 試験期間中は、現行のCOPDガイドラインに沿って、吸入抗コリン薬を除くすべての呼吸器治療薬(吸入β刺激薬、吸入ステロイド、テオフィリンなど)の併用を許可した。

 主要エンドポイントは1年当たりのFEV1低下率に設定された。投与開始から30日目(定常状態となる)以降、盲検終了時までのFEV1を、気管支拡張薬の使用前と使用後の2ポイントで測定。それぞれについて、1年当たりの低下率を求めた。

 2次エンドポイントは、FVC値の低下率、SGRQ(St. George's Respiratory Questionnaire)に基づく健康関連QOL(スコアが小さいほどQOLが高く、4ユニット以上の改善で臨床的に意義があると判断される)、COPDの増悪(新たな呼吸器症状が発生し3日以上持続、または治療が必要になった場合)と増悪関連入院、死亡率などに設定された。

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