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JAMA誌から
終末期の話し合いは患者と介護者に利益をもたらす
積極的な医学的介入を減らし、QOLを向上させる

 死について語ることは難しい。末期の癌患者と医師が終末期をどう過ごすかについて話し合うことのリスクとベネフィットは、これまで明らかではなかった。米Dana-Farber癌研究所のAlexi A. Wright氏らは、終末期医療に関する話し合いは患者にも介護者にも有益で、患者に心理的なダメージは見られないことを観察研究によって明らかにした。詳細は、JAMA誌2008年10月8日号に報告された。

 終末期医療に関する話し合いは、患者に死に至る過程と死の直前に求めるべき医療について考える機会を与える。一方で、患者は、医療の限界に直面し、死が間もなく訪れることを痛感することになる。これが精神的な苦しみを引き起こす可能性がある。

 しかしこれまで、終末期医療に関する話し合いが、患者や介護者の精神状態と死を前にした医学的介入に与える影響を調べた研究はなかった。そこで著者らは、終末期の話し合いが患者と介護者のQOLに及ぼす影響を評価し、積極的な介入の抑制につながるかどうかを調べることにした。

 米国内の複数の施設で前向きコホート研究を実施した。2002年9月から2008年2月までに、20歳以上の進行癌患者と介護者(配偶者または成人している患者の息子または娘)332ペアを登録。介護者の内訳は、配偶者が51.4%、成人した子が24.0%、それ以外の親族13.9%、友人6.6%、親は4.2%だった。

 ベースラインの面接調査で、「あなたは主治医と終末期に望む医療について話しましたか」という問いに対して「はい」と回答した患者は123人(37.0%)いた。

 主要アウトカム評価指標は、死亡前1週間の積極的な治療(ICU入院、機械的換気、蘇生、化学療法、経管栄養など)とホスピスサービスの利用に設定。2次アウトカム評価指標として、患者と介護者の精神的健康状態、QOLなどについて比較した。

 患者のQOLについては、死の直前1週間に介護に当たっていた介護者を対象に「患者の死の瞬間とその前の1週間のQOLを0(最悪)から10(最良)のスコアのいずれかで表す」よう依頼し、回答を得た(介護者の目を通した患者のQOL)。

 介護者に対する影響は、患者の死後、中央値6.5カ月で面接を行い、患者の死への適応状態を調べた。この時期を選んだのは、死の直後の深い悲しみを乗り越えたころと予想され、かつ想起バイアスはほとんどないと考えられたため。

 332人の患者は、登録から中央値4.4カ月で死亡した。

 終末期の話し合いの有無と、社会人口学的特性、加入している保険の有無や、癌のタイプ、医師との関係、信仰の強さ、社会的支援の有無などの間に有意な関係は見られなかった。

 医療機関ごとの差は大きく、話し合いの実施頻度は16.2%から61.5%と幅広かった。

 ベースラインで既に話し合いを終えていた患者の方が、そうでない患者より有意に全身状態が悪く、生存期間は短かった。

 McGill心理学的サブスケールを指標として、話し合いが患者に及ぼす影響を調べたが、抑うつ、悲しみ、恐れ、不安の高まりは見られなかった。同様に、大うつ病性障害のリスク上昇もなかった(話し合いあり群8.3%、なし群5.8%、調整オッズ比は1.33、95%信頼区間0.54-3.32)。

 終末期の話し合いがあった患者群では、死が近いことを受け入れた人の割合が多く(52.9%と28.7%、調整オッズ比2.19、1.40-3.43、p<0.001)、医学的介入には余命延長でなく疼痛緩和と不快な症状の低減を希望し(85.4%と70.0%、2.63、1.54-4.49、p<0.001)、蘇生を全く望まない割合(63.0%と28.5%、3.12、1.98-4.90、p<0.001)が有意に高かった。

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