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BMJ誌から
前立腺肥大症の低侵襲治療は切除術に勝るか?
有害事象は少ないが改善の程度は低く再手術率が高い

前立腺肥大症に対する治療の中で最も有効と考えられているのが、経尿道的前立腺切除術(TURP)だ。しかし、近年は、より簡便で有効、安全かつ低コストの治療が求められており、レーザーなどを使った最小侵襲治療が広まりつつある。

 英Aberdeen大学のTania Lourenco氏らは、前立腺肥大症患者を対象として、最小侵襲治療とTURPの有効性と安全性を比較した無作為化試験(RCT)のメタ分析を行った。結果は、最小侵襲治療の有効性はTURPの代替として適用できるレベルに至っておらず、有害事象は少ないものの再手術率は高いことを示した。詳細は、BMJ誌電子版に2008年10月9日に報告された。

 TURPは、術者に高度な技術を要求し、患者には3~5日の入院を求める治療だ。既に本邦でも臨床適用されている最小侵襲治療は、TURPの代替になるのではないかと期待されている。

 著者らは、2006年3月までに文献データベースに登録された研究報告から、条件を満たした22件のRCTを選出。登録患者数は2434人で、24通りの比較が行われていた。これらの研究の質は低~中で、いずれも小規模だった。

 最小侵襲治療は、レーザーなど低エネルギーの加熱デバイスを用いて組織に遅発性の壊死を誘導、前立腺の体積を減らす方法と定義。経尿道的マイクロ波温熱療法(TUMT)(6件の比較)、経尿道的ニードルアブレーション(TUNA)(4件の比較)、レーザー凝固法(13件の比較)が主に用いられていた。

 高密度焦点式超音波療法、経尿道的エタノール注入療法などについては、データが不足していたため評価できなかった。

 主要アウトカム評価指標は、国際前立腺症状スコアまたは米国泌尿器科学会症状指標(AUASI)のスコアの、ベースラインから治療後12カ月時までの変化とした。これらの指標はどちらも、尿勢低下、尿線途絶、腹圧排尿、残尿感という4つの排尿症状と、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感という3つの蓄尿症状のそれぞれについて、重症度を0(症状なし)から5(重症)で表し、スコアの合計に基づいて、患者を軽症(0~7ポイント)、中症(8~19ポイント)、重症(20~35ポイント)に分類するもの。

 2次アウトカムは、QOLと最大尿流率(これらは有効性の評価指標)、輸血、尿失禁、尿閉、尿道狭窄、尿路感染、逆行性射精、勃起不全(以上は有害事象)、手術の所要時間、入院期間、再手術の必要性などに設定した。

 ベースラインから12カ月後までの症状スコアの変化は、ランダム効果メタ分析により比較した。いずれの最小侵襲治療も症状改善をもたらしていたが、TURPに比べると改善の幅は小さかった。

 症状スコアの改善の加重平均差は、TUMTが2.26(95%信頼区間-0.38から4.91、p=0.09)、TUNAは3.90(1.27から6.53、p=0.004)、レーザー凝固法は3.01(-1.06から7.07、p=0.15)だった。

 尿流率の加重平均差は、TUMTが-5.08(-8.32から-1.83、p=0.002)、TUNAは-9.04(-14.68から-3.40、p=0.002)、レーザー凝固法は-5.50(-9.86から-1.13、p=0.01)だった。

 QOLスコアは、評価に用いられた指標が様々だったため、メタ分析が行えなかった。

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