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第3回「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期研修制度)のあり方に関する研究」班会議傍聴記
お説ごもっとも。あとは実行あるのみ
川口恭(ロハス・メディカル発行人)

2008/11/11

 過去2回は最初から最後まで録画をしていたテレビカメラがなくなった。個人的には、録っておいてほしかったなと思うやりとりが多かったんだけどなあ。

 さて、この日は日本学術会議の『医療のイノベーション検討委員会』委員長、桐野高明・国立国際医療センター総長からヒアリング。最初の15分は、委員会が今年6月に政府に対して提出した要望『信頼に支えられた医療の実現―医療を崩壊させないために―』を踏まえつつ、桐野委員長がプレゼン。その後で1時間15分ほど質疑応答。

 資料はこちらから。

桐野
「日本の医療というのは先進国型になっていない。先進国型というのは、

1.充実した教育体制と厳格な専門医認定制度、
2.病院機能の集中化・集約化、
3.病院と診療所の密接な連携体制、
4.チーム医療の推進と業務範囲の職種による制限の見直し、
5.医療安全と患者権利尊重のためのシステム

といった5つの特徴があって、そしてどこの国も増大する医療費をどう抑制するか、あるいは賄うか苦心している。日本の場合は大きく見て3つのことが足りないということから政府に対して以下の要望をした。

1.医療費抑制政策の転換、
2.病院医療の抜本的な改革、
3.専門医制度認証委員会の設置。

 このうち3だけが異質な感じがするかもしれないが、この3こそ今日の会議のテーマでもあるので、なぜこんなことを要望したのか説明する。

 医療には、政府、国民、医療提供者の3つのプレイヤーがいて、それぞれが将来に必要なことを考える必要があるのだが、特に医療提供者が信頼を持続的に高めていく努力が足りず、そこの自己努力をやってみせないと他の2者も動いてくれない。自己努力のシンボリックなものが専門医であり、具体的には認証制度が必要だということで要望の内容になった。

 ここからは学術会議の結論ではなく個人的な意見になる。専門医制度は医師の自律的専門職能集団が運営しなければうまくいかない。そして、その集団が権威を持って運営するために医師全員加盟型である必要がある。

 学術会議では第7部、臨床医学を扱うところだが、そこで既に平成11年に『専門医制度の整備と専門医資格認定機構の設置について』という報告を出していて、専門医制度は既にわが国においてほとんど完備しており、プライマリケアの専門医制度の導入は非常に困難であるということになっているのだが、それは本当か。

 専門医制度の現状として、基本領域の専門医が12万6千人、サブスペシャリティ30弱で8万2千人、その他の領域2万人。プライマリケアの専門医制度は確立していない。専門医制度の問題点は以下の5点。

 教育プログラム・教育病院の評価が不十分、学会ごと独自に運営され外部評価を浮けていない、養成すべき専門医の総数と地域別の分布が制御されていない、プライマリケアの専門医制度が確立していない、結果として実効性が低く実益もない。特に3番目と4番目が重要。

 ということで専門医制度の改革が必要であろう。わが国においては法的な裏付けが必要だと思うのだが、専門医制度の認証機関を設置すること、プライマリケア専門医も含めて数や分布を制御する、そのうえで専門医に対して技術料の評価を行って、押すのと引っ張るのをセットで進めることを提言した。

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