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BMJ誌から
肘外傷患者の骨折の有無をX線なしで見分ける方法とは
簡単な肘伸展検査で、X線検査の適応を判断

2008/12/26
大西 淳子=医学ジャーナリスト

 1次・2次医療機関をよく受診する肘外傷の患者に対して、X線検査を行わなくても、簡単な肘伸展検査で骨折の有無を予測できる――。そんな研究結果を、英Royal Devon and Exeter Foundation NHS TrustのAndrew Appelboam氏らがまとめ、BMJ誌電子版に2008年12月9日に報告した。

 肘外傷患者に骨折が見つかる頻度はさほど高くはないが、現時点では、どういう場合にX線検査を行うべきかを指示したガイドラインはない。診察時に骨折の有無を予測する方法があれば、不要なX線検査は回避でき、コスト低減が可能になる。

 先に行われた小規模研究で、外傷のある肘の完全伸展が可能なら、臨床的な意義のある骨折は存在しない可能性が示唆された。だが、この方法が日常診療で有効かどうか、また、小児患者にも適用できるかどうかは確認されていなかった。

 そこで著者らは、肘伸展検査が、日常診療において骨損傷の有無を見分けるために役立つかどうかを判定するため、2次医療機関で、成人については多施設前向き介入バリデーション試験を、小児については多施設前向き観察研究を実施した。

 英国南西部の5つの救急部門で、2004年7月から2006年4月まで患者の選出を行った。

 成人(今回は15歳超とした)と小児(3~15歳)合わせて2127人が急性の肘外傷で救急部門を受診した。発症から72時間以内などの条件を満たした1740人(成人は960人、小児は780人)を選出。成人患者の年齢は16~94歳(平均年齢38歳)、小児患者は3~15歳(平均年齢は10歳)だった。

 患者には来院時に鎮痛薬を投与し、肘伸展検査は診察項目の一つとして以下のように行われた。

 腕を隠さない衣類を着て着席している患者に、手のひらを上向きにして床と水平になるところまで腕を持ち上げ、肘を伸ばした状態で維持するように指示する。左右の腕の肘の伸び具合が同じであれば「完全な伸展」と判定する。

 完全伸展が確認された成人患者にはX線検査を行わず、鎮痛薬と、必要な場合のみ三角巾を提供し、帰宅させた。

 小児患者の場合には、肘伸展検査の結果にかかわらず、担当医の判断でX線検査を実施した。

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