日経メディカルのロゴ画像

NEJM誌から
RTS,S/ASマラリアワクチンの乳児への接種は有効かつ安全
異なるアジュバントを用いた2つの試験で好成績

 現在開発中のRTS,S/ASマラリアワクチンに、それぞれ異なるアジュバントを用いた2件の無作為化試験の結果が、NEJM誌2008年12月11日号に報告された。いずれの試験でも、乳児における安全性や有効性は良好だった。

 Plasmodium falciparumによるマラリアは、世界的な問題になっている。RTS,S/ASワクチンは、スポロゾイトの表面に存在する抗原(CSP:スポロゾイト周囲蛋白質)の一部と、B型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原(HBs抗原)を融合した組み換えたんぱく質を抗原としたワクチンで、GSK社専有のアジュバント(AS01またはAS02)を併用する。当初から、マラリアだけでなくHBV感染も予防するよう設計されている。

 RTS,S/ASワクチンは、WHOの拡大予防接種計画(EPI)を通じて配布することを前提に開発されており、既にフェーズ3の試験設計段階にある。

 これまでに行われた試験では、RTS,S/AS02ワクチンを1~4歳児に用いた場合のマラリア発症防御率は30%と報告されていた。この数字を十分でないと考えたケニア中央医学研究所(KEMRI)のPhilip Bejon氏らは、アジュバントとしてはAS02よりAS01の方が強力であることを示唆した予備的な結果に基づいて、フェーズ3開始前にどちらのアジュバントが有効かを見極めることにした。

 このワクチンの適応年齢となっている生後5~17カ月の小児を対象に、AS01Eアジュバントの有効性を調べる二重盲検の無作為化試験を、ケニアのKilifiとタンザニアのKorogweで実施した。

 894人の小児を無作為にRTS,S/AS01Eワクチン(447人、介入群)または狂犬病ワクチン(447人、対照群)に割り付け、2007年3月に接種を開始。いずれも3回、三角筋に筋注した。

 初回接種後2.5カ月からマラリア発症を監視するために週1回の家庭訪問を行った。

 主要エンドポイントは、マラリアの臨床症状の発現(血液1μL当たりのPlasmodium falciparum数が2500個超かつ腋下体温が37.5℃以上)に設定。

 プロトコル通りに試験を完了し、分析に必要な情報がそろっていた小児は809人。平均追跡期間は7.9カ月だった。これらの小児を対象とするaccording-to-protocol分析では、累積罹患数(初回エピソードのみをカウント)は介入群402人中32人(8%)、対照群407人中66人(16%)で、Cox回帰分析による調整有効率(1からハザード比を引いたもの)は53%(p<0.001)となった。

この記事を読んでいる人におすすめ