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国立がんセンター借金問題の元凶も、やはり官のムダ遣い

2008/12/15

 前回の「医療界に真のリーダーは存在するのか」に対するコメントで、kkさんから「勤務医は頑張っていると思っています。赤字の大きな原因にはやはり人件費が大きいと感じます。事務系がとても多く、皆、あまり忙しそうではありません。(中略)余計な事務員を減らせばかなり人件費の無駄は省けると思います。夕張や銚子のようにならないためにも、まず早急に見直して欲しいです」というご意見をいただきました。

 少し前に銚子市立総合病院の閉鎖が大きな話題となりましたが、自治体病院の赤字の理由として(前回ご紹介した)鈴木寛参議院議員は、(1)小児科、産科、救急などの非採算部門を他病院が撤退した後も最後の砦として担っている、(2)一部病院では建替え時にハードにお金をかけすぎ返済額が過大、(3)看護師らコメディカルの勤続年数や平均年齢の関係で人件費が割高、などを指摘されています(関連記事はこちら)。

 私も鈴木氏のお考えにほぼ同感です。ただ、医師の中に、自治体病院の職員給与が高すぎることを理由に民営化を訴える意見があることには違和感を覚えています。割高な人件費を下げるために民営化に踏み切るよりも、自治体の財政を圧迫している一般行政職の人件費も同時に見直し、自治体の赤字を減らすことが先決なのでは、と私は思います。現状では、赤字の責任が、医師不足の中で踏ん張っている自治体病院に転嫁されているのが現状だからです。この構図が変わらない限り、医療空白地帯が全国でますます拡大してしまうと危惧しています。

 さて、鈴木氏も指摘する「一部病院では建替え時にハードにお金をかけすぎ返済額が過大」という問題を象徴するかのような話題が、「築地『国立がんセンター』借金600億円! このまま独立行政法人化したら“倒産”もあり…」というショッキングな見出しで、週刊誌「女性自身」(2008年12月16日号)に紹介されています。

 記事によると、国立がんセンターは新棟建設費などに要した500~600億円の借金を抱えており、この借金を背負ったままで独立行政法人化されると、先端医療の研究を維持することができなくなるばかりか、存続をも危ぶまれる事態になるそうです。

 しかも、同センターでは、病院長は病院建設にほとんど関与できず、厚生労働省から出向してきた役人で構成される「運営局」が、民間に比べて破格の建設費用をつぎ込み、そのツケを病院が負わされることになってしまった、とあります。

 国立がんセンターの医師は、約半数が非常勤で、20代、30代の非常勤の医師は朝から晩まで働き、手取りは月20万円ほどだそうです。一方、「がんセンターの局長、次長となれば、退官間近の最終ポストをとしてあてがわれる、ステータスのあるポジション。『独法後も厚労省は予算をちらつかせて、理事として何人ポストを確保するかに心血をそそいでいます』(厚労省関係者)」(「女性自身」2008年12月16日号p194より引用)。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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