日経メディカルのロゴ画像

NEJM誌から
腎臓ドナーの健康状態は長期にわたって良好
生存率は非提供者と同様で、QOLは高い

 生体腎移植ドナーとなった人々の長期的な臨床転帰に対する関心は高い。米国Minnesota大学のHassan N. Ibrahim氏らは、腎臓提供から最大で45年が経過しているドナー3698人の健康状態を調べた。ドナーの生存率は非提供者と同様で、末期腎疾患(ESRD)リスクの上昇も見られず、QOLは一般集団に比べ高いことが明らかになった。詳細は、NEJM誌2009年1月29日号に報告された。

 これまでに行われた研究でも、腎臓提供者に生存期間短縮やESRDリスクの上昇はないことが示唆されていた。だが、それらの研究の対象となったドナーは少人数で、追跡期間も短かった。

 著者らは、1963年11月から2007年12月に米国Minnesota大学で腎臓提供を行った3698人の生存状況とESRDの生涯リスクなどを調べた。

 腎臓提供時にすべてのドナーは詳細な健康診断を受けており、糖尿病や高血圧でなく、推定GFRが80mL/分/体表面積1.73m2以上で、医療歴に問題はなく、腎臓と血管のイメージングや一連の検査により、腎疾患、感染、全身性の疾患はないことが確認されていた。

 ドナーの生存については、2007年12月31日の時点で、米社会保障庁の死亡登録の一時金支払い記録を用いて確認した。また、2003年12月の時点で、生存しているドナーに接触を試み、2949人から健康状態に関する情報を得た。尿検査や血液検査の結果が分かる場合には報告を求めた。

 これらの人々については、提供からの経過期間(3年ごとに区切って層別化)と性別に基づいてグループ化し、各グループから5~10%を選出。合意が得られた255人(ドナー全体の6.9%)を対象に、2003~2007年に、糸球体濾過率(GFR)と尿中アルブミン排泄量を測定、高血圧の有病率、全般的な健康状態、QOL(SF-12、SF-36などの調査票を使用)について評価した。 

 3698人のドナーのうち、3404人が生存、268人が死亡していた。外国籍の26人については、生死は不明だった。162人の死因は不明だった。残りの106人のうち30%は心血管疾患による死亡だった。

 複数のデータソースから、ドナーと年齢、性別、人種または民族がマッチする一般の人々の生存率を推定、ドナーと比較したところ、差は見られなかった。 

 移植から平均22.5±10.4年後に、11人(7人が女性)のドナーが透析または移植を必要とするESRDを発症していた。死亡ドナーについても腎機能を示す検査値を探し、死者の中にESRDと見なされる人がいなかったことを確認、その上でESRDの年間罹患率を計算したところ、100万人当たり180となった。一般集団のESRD罹患率は100万人当たり268だった。

 GFR測定に同意したドナー255人(61.6%が女性)の、腎提供からの経過期間は平均12.2±9.2年だった。

 これらのドナーの提供時のデータは、血清クレアチニン値が0.9±0.2mg/dL、GFRが84.0±13.8mL/分/体表面積1.73m2。新たな測定値はそれぞれ、1.1±0.2mg/dLと63.7±11.9mL/分/1.73m2だった。ドナーの85.5%がGFR 60mL/分/1.73m2以上を維持しており、30mL/分/1.73m2以下を示したドナーはいなかった。

この記事を読んでいる人におすすめ