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JAMA誌から
高齢者の脆弱性骨折は死亡リスクを高める

 高齢化が進むにつれて、骨粗鬆症性骨折は増加すると見られている。オーストラリアSt Vincent病院のDana Bliuc氏らが、60歳以上の高齢者の脆弱性骨折後の死亡率を調べたところ、どの部位の骨折であっても、骨折後5年間の死亡リスク上昇に関係することが明らかになった。骨折が続発した場合はさらに死亡リスクが高まっていた。詳細は、JAMA誌2009年2月4日号に報告された。

 骨折をhigh-trauma fracture(転落や交通事故など大きな力が作用したことによる骨折)とlow-trauma fracture(立った高さからの転倒などを原因とする骨折で外傷は少ない)に分類すると、後者は骨粗鬆症患者や骨密度低下のある高齢者に多く見られる。このような脆弱性骨折は続発する可能性がある。

 これまで、高齢者の骨折と死亡の関係を5年以上に渡って調べた研究はわずかしかなく、特に、大腿骨頸部と脊椎骨以外の部位の骨折とその後の死亡に関する情報はほとんどなかった。また、骨折の続発が死亡リスクに及ぼす影響は明らかではなかった。

 そこで著者らは、60歳以上の男女(75歳未満と75歳以上に層別化)のあらゆる脆弱性骨折後の死亡リスクを長期的に評価し、続発骨折と死亡リスクの関係を調べ、骨折発生時点の患者特性の中から死亡の予測に役立つ因子を同定することを目的として、前向きコホート研究を実施した。

 コホート研究が行われたオーストラリアのDubboの1989年の人口は3万2000人で、98.6%が白人だった。同年に地域で生活していた60歳以上の高齢者は、女性2245人、男性1760人だった。

 追跡期間となった1989年4月から2007年5月の間に発生した骨折の全症例のうち、交通事故に起因するもの、病的骨折(癌や骨バジェット病など)、頭部と手足の指の骨折は、分析対象から除外し、脆弱性骨折のみに焦点を当てた。

 死亡リスクとの関係を調べるために脆弱性骨折を以下の4タイプに分類した。大腿骨頸部骨折脊椎骨折大骨折(骨盤、大腿骨遠位部、脛骨近位端、肋骨3カ所以上、上腕骨近位の骨折)、小骨折(それ以外の骨粗鬆症性骨折)。同時に複数箇所を骨折した患者については重症度の高い骨折部位を分析対象とした。

 死亡の予測因子を探す研究の対象となったのは、同意が得られた女性452人(47%)と男性162人(47%)。質問票を用いて、身体活動量、カルシウム摂取量、喫煙、飲酒、過去1年間の転倒回数、併存疾患、使用している医薬品などに関する情報を収集。身体計測とともに骨密度、大腿四頭筋の筋力、重心動揺などを測定した。

 女性は2万9660人-年の追跡で952件、男性は2万717人-年の追跡で343件の脆弱性骨折が発生。1000人-年当たりの骨折件数は女性が32件(95%信頼区間30-34)、男性が17件(15-18)だった。

 骨折経験者のうち、女性461人、男性197人が追跡期間中に死亡していた。100人-年当たりにすると、それぞれ7.8(7.1-8.5)と11.3(9.8-13.0)になった。骨折のタイプ別にみると、男女ともに大腿骨頸部骨折経験者の死亡率が最も高く、2番目が脊椎骨折患者だった。

 予想通り、年齢上昇と共に死亡率は高くなった。どの年齢でも死亡率は女性より男性で高く、この現象はより高齢のグループで顕著だった。

 絶対死亡率は、骨折から5年間が最も高く、女性で100人-年当たり8.9(7.9-9.9)、男性では14.5(12.4-17.0)。骨折後5年間の死亡率の絶対上昇は骨折のタイプによって異なり、女性では100人-年当たり1.3(小骨折)から13.2(大腿骨頸部)、男性では100人-年当たり2.7(小骨折)から22.3(大腿骨頸部)だった。

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