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NEJM誌から
RSV流行期には5歳未満児の8%が小児科を受診
救急外来受診率は2.8%、入院率は0.3%

 RSウイルス(respiratory syncytial virus: RSV、呼吸器多核体ウイルス)が幼児の入院の原因になることはよく知られている。しかし、外来受診に関する情報は不足しており、幼児のRSV感染が医療機関にもたらす総合的な負荷は明確に分かっていない。

 そこで、米国Rochester大学のCaroline Breese Hall氏らは、2000年から2004年の流行期に、米国の3郡で5歳未満の幼児のRSV感染による入院と外来受診について調査した。この結果、地域集団レベルの流行期(11月~4月)の入院率は1000人当たり3人、救急外来受診率は1000人当たり28人、小児科外来受診率は1000人当たり80人と推定された。詳細は、NEJM誌2009年2月5日号に報告された。

 著者らは、米疾病管理センター(CDC)の大規模サーベーランスネットワークであるNew Vaccine Surveillance Network(NVSN)を通じて前向きに得た情報を分析した。

 2000年から2004年の流行期(11月~4月)に行った、5歳以下の急性呼吸器感染による入院患者を対象とする調査と、同時期に行った、救急部門と小児科医院の外来を受診した患者に関する調査のデータを収集。このうち、5歳未満で、発熱、咳、耳痛、鼻閉、鼻漏、喉痛、咳き込み後の嘔吐、喘鳴、努力呼吸、呼吸促迫、浅呼吸のうちの1つ以上を示し、急性呼吸器感染症と診断された患者の情報を抽出した。

 患者の人口統計学的、社会的な情報と医療歴は、保護者との面談により入手し、臨床情報と検査値、臨床管理の詳細は、医療施設と担当医から得た。早期産(在胎36週未満の出生)、慢性肺炎、心疾患、腎疾患、免疫不全症、鎌状赤血球貧血といったハイリスク要因に関する記録も探した。リスクを高める環境要因として、保育園の利用、受動喫煙、母親の教育歴、母乳育児の期間、5歳未満の兄弟との同居などの情報も得た。

 患者から鼻腔スワブ、咽頭スワブを採取し、抗原検出キットを用いてRSVを検出。さらに、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)とウイルス分離を行い、RSVと他の呼吸器感染病原体を確認した。

 5067人の急性呼吸器感染小児患者が分析対象になった。57%が入院患者で、救急部門外来受診は20%、小児科外来受診は23%だった。著者らにより、計919人(18%)がRSV感染と判定された。うち564人(61%)は入院患者、184人(20%)が救急外来患者、171人(19%)が小児科外来受診者だった。したがって、急性呼吸器感染による入院患者の20%、救急部門受診者の18%、小児科外来受診者の15%がRSVに感染していたことが明らかになった。

 RSV陽性の入院患者564人に由来する標本のうち、547検体(97%)はRT-PCRによって、171検体(30%)はウイルス分離によって、感染が確認された。両方の検査が行われた500検体のうち、329検体(66%)はRT-PCRのみ陽性、17検体(3%)はウイルス分離のみ陽性だった。

 患者から分離された753株のウイルスのサブグループをRT-PCRにより確認したところ、602株(80%)はグループA、137株(18%)はグループB、14株(2%)からはAとBの両方が見つかった。グループAは入院患者の81%、外来患者の78%から見つかった。

 58標本からは他のウイルスも検出された:インフルエンザ(26検体)、パラインフルエンザ(8検体)、ライノウイルス(11検体)、アデノウイルス(6検体)、サイトメガロウイルス(5検体)、その他のウイルス(4検体)。

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