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世田谷区医師会内科医会講演会レポート
がんセンターの問題って、そういうことだったのか
川口恭(ロハス・メディカル発行人)

2009/02/18

 土曜日の昼下がり、国立がんセンター中央病院の土屋了介院長が世田谷区の医師会会館まで出掛けて行って、ナショナルセンター問題などに関して講演。その模様がインターネットで(全世界に)中継されるという面白い仕掛け。

 なぜこんな企画になったのか、インターネット中継のサイトから趣旨を全文拾うと『国立がんセンターが平成22年度から独立行政法人になることが決まっています。ご承知のように一般病院の1.5倍の経費をかけ、壮大なセンターが出来ていますが、官僚的運営によって麻酔医が5人一度に退職するなど、いろいろな問題を抱えています。このまま法人化して国の管理下から放り出されると、約600億円という負債を抱えたまま厳しい運営を迫られることが予想されています。国立がんセンターは、世田谷区の地域医療にとっても重要な専門医療機関です。今後のしっかりとした展望と、医療連携の基盤をどのように作っていくのか、是非忌憚のないお話をお聞きしたいと考えています。』ということらしい。

 講演そのものの内容は後期研修班会議などの議論と重なるところが多いので割愛して、質疑応答部をご紹介する。のっけからエゲツナイ話が続く。

神津(司会)
「夢のあるお話を聴かせていただいた一方で、とりあえず国立がんセンターが平成22年度に独立行政法人化する際に600億円の負債を抱えた状態で、そこまで行き着くのか、海原の大波に翻弄されるのでないかと気になる」

土屋
「一番怖いのはそこの所。今まで独立行政法人化したり民営化したりした所いくつも苦労されている。一番が西川さんのところの日本郵政だと思うが、どうして苦労するかというと国からいろいろ口を出される。なぜ口を出されるかを見た時に、国が株主であるということと同時に借金を抱えているから。

 その問題に気づいたのは一昨年にJR東日本の山之内さんという人の本をたまたま本屋で立ち読みしてから。国鉄は24兆円の借金があったのを清算事業団にかなり負わせてスタートしているのはご承知の通りで、JR東日本はお前の所は3兆円の分担と言われていたのが、蓋を開けたら6兆円だったらしい。だがJRは商売上手でエキュートとか何とかで大分返した。

 しかし考えてみると、病院は統制経済だから返しようがない。病院と似たところという意味では、国立病院群とか国立大学とかはどうか。国立病院は東京医療センターの隣に立派な本部があって矢崎先生だけは国際医療センター総長から行った医師だけど、他はほとんど天下り

 中には優秀な官僚も行っているから何とかやっているけれど、天下りは自分たちが何もしたくないから改革の歩みは遅い。

 国立大学についても、ナショナルセンター問題が出てから、山形大の医学部長の嘉山先生が調べたら全体で1兆円を超える借金があることが明らかになった。そして、各大学に文部科学省の天下りが理事で入っている。

 その天下りの理事が何をしているか、といえば、借金の返済を交付金でカバーしている。で税金から出しているんだからという理屈で天下りもさせ、何か改革しようとすると交付金を減らすぞと脅しをかけてくる、そんな状態のようだ。

 改革という意味では、独法化したら銀行から資金調達する必要も出てくるが、その時に土地を担保に入れてというようなことをしたくても、がんセンターは資産計算すらできてない。陰ではやっているのかもしれないが、少なくとも私は知らされていない。レジデントの給与を民間並みにするだけでもお金が要るのだが。

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