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NEJM誌から
米国の乳癌罹患率低下の一因はHRTの減少
WHI試験中止後の追跡調査などで裏付け

 米国では2002年以降、閉経女性を対象とするホルモン補充療法HRT)が減少した。これと並行して乳癌の罹患率も減少したため、国民レベルでもHRTと乳癌の関係が疑われるようになった。

 米国Harbor-UCLA Medical CenterのRowan T. Chlebowski氏らは、HRT減少のきっかけとなったWHI(Women's Health Initiative)試験のデータを分析し、HRT期間と治療中止後の乳癌リスクの変化を調べた。得られた結果は、HRTの減少が乳癌罹患率低下の一因であるという説を支持するものだった。詳細は、NEJM誌2009年2月5日号に報告された。

 WHI試験は、エストロゲンとプロゲスチンの2剤を併用するホルモン補充療法(HRT)には、利益を上回るリスク(浸潤性乳癌その他のリスク上昇)があることを示したため、2002年に中止された。HRT群では、乳癌の罹患率が高かっただけでなく、診断時の腫瘍のサイズが大きく、より進行した段階にあったとの報告がある。また、マンモグラムと乳房生検で異常が見られる割合も、HRT群で高かった。さらに早期中止後の追跡期間(平均2.4年)中も、HRT群の乳癌罹患率は偽薬群に比べ高かった。

 以上のような知見を基に著者らは、WHIの無作為化試験のデータと観察研究部分のデータを分析し、HRT適用と中止が閉経女性の乳癌リスクに与える影響を経時的に調べることにした。

 WHI無作為化試験の対象となったのは50~79歳の閉経女性で、浸潤性乳癌の既往がなく、子宮を摘出しておらず、ベースラインのマンモグラムと診察で乳癌を示す徴候が認められなかった人々だ。1万6608人を登録し、1993年10月に最初の割り付けを行った。介入群は0.625mgの結合型ウマエストロゲン+2.5mg酢酸メドロキシプロゲステロンの合剤を毎日服用し、対照群は偽薬を使用した。

 早期中止が決まり、試験薬の服用を中止するよう指示した2002年7月から、当初計画されていた試験期間の終わりとなる2005年3月末まで、追跡が行われた。データが得られたのは、HRT群7854人、偽薬群7533人の計1万5387人だった。

 観察研究部分に登録されたのは、無作為化試験と同様に、乳癌既往なし、子宮摘出なし、登録前の2年以内に受けたマンモで異常なしという条件を満たしていた4万1449人の女性。このうち2万5328人がHRT歴なし(対照群)、1万6121人はベースラインで2剤併用のHRTを受けていた(HRT群)。登録は1994年9月に開始され、追跡は2005年12月末まで行われた。観察研究の対象者には、無作為化試験の結果に基づく指示は与えられなかったが、結果の概要は告げられた。

 これらの登録者の人口統計学的データと、乳癌危険因子、医療歴と家族歴、ライフスタイル、過去のHRT歴などの情報は、自己申告により入手した。

 観察研究のコホートについては、年1回、HRTを継続しているかどうか確認した。

 マンモグラフィーは、無作為化試験の登録者には年1回実施された。観察研究のプロトコールにはマンモに関する指示はなかったが、毎年、受検の有無を確認した。

 無作為化試験では6カ月ごと、観察研究では年1回の質問票を用いた調査を行い、乳癌罹患などの臨床転帰に関する情報を得た。

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