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野村、長嶋、星野―あなたはどのタイプ?

2009/02/20

 上司になると、嫌でも人の評価をしなくてはなりません。しかし、年功序列の社会が長く続いた日本において、上司は、部下を評価することにまだ慣れていません。

 自分が部下だった時を振り返ってみてください。上司からどのような評価を受けて、その時どのように感じましたか?自己評価と比較して、どのような違いがありましたか?きっと、納得できなかったり、逆に、予想以上に高い評価を受けてうれしく思ったこともあるでしょう。

 適切な人事考課を行う上では、経験の積み重ねと、学問的に裏づけされた適正な評価システムの構築が欠かせません。ただ、そうしたしっかりとした評価システムがない組織も、日本にはまだ多いと思います。もしかしたら、医療界もそうかもしれません。

 適正な人事評価システムがない組織では、上司はとかく、自分の価値観や好き嫌いで部下を評価しがちです。本来、人を評価するためには、そのための専門的な知識の習得が必要なのではないでしょうか?したがって、管理職には、評価者としてのスキルをアップさせるための訓練を課すことが不可欠だと思っています。

 例えば、「人事評価認定資格2段」などという資格制にしてもいいかもしれません。人を評価するのはとても難しく、上司だからといって誰でも上手にできるものではありません。また、評価基準はあいまいにせず、上司によってその評価が大きく異なることがないようにすることが望ましいでしょう.

 企業の中には、上司が部下を評価する一方で、部下が上司を評価する制度を導入している例もあるようです。部下から評価されることにより、「上司はどうあるべきか」「部下をどのように指導すべきか」といったことを上司が真剣に考えるきっかけになれば、部下の評価に関しても真摯に取り組んでいけるでしょう。

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 上司の耳には、いろいろなところから、噂レベルのものも含め部下の情報が入ってきます。それらの情報の中には、正しいものもありますが、故意にねじ曲げられた情報が含まれている可能性も多分にあります。

 それらの情報を、部下を評価する際の1つの材料として心の隅に留めておくのは構いませんが、人の噂だけで部下のすべてを判断してはいけません。人は、職場環境や置かれた立場、他者からの評価により、大きく伸びたり、やる気を失ったりします。良い面を最大限引き出せるように部下と接するのも、上司の重要な役目ではないでしょうか。

 他の部署で問題児であった部下が、あなたの下ではうまくやっていける可能性も十分にあります。そこは、あなたの上司としての腕の見せ所です。ですから上司は、部下の人となりを自分でしっかりと確かめ、分析する努力を惜しんではいけません。上司の前では、本当の自分を隠していい子に振舞う部下も少なからずいるものです。そのような可能性も頭に入れながら、相手の本質を見抜く「洞察力」を持つことが上司には望まれます。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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