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現場から医学教育を叫ぶ!!
森田知宏、竹内麻里子、嶋田裕記(東京大学3年)

2009/02/20

(左)島田裕記氏(中)森田知宏氏(右)竹内麻里子氏

<いざ鴨川>

 去る2月4日(水)、「明日の臨床研修制度を考えるシンポジウム」が亀田総合病院にて開催されました。テーマは医師の教育について。しかも制度論ではなく、医師を育てるためにどのような教育がいいのか、ということについて、様々な分野でご活躍なさっている先生方がディスカッションする珍しいものです。

 東京からバスに揺られること2時間半。千葉県鴨川市ののどかな田園風景に突如出現するリゾートホテル地帯、それが初めて亀田総合病院を見た印象でした。亀田総合病院は900床以上のベッド数を誇る千葉県南部の中核病院で、研修病院としても人気の病院です。 

 今回シンポジストとして招かれた先生方は、土屋了介先生、嘉山孝正先生(山形大学医学部長)、亀田信介先生(亀田総合病院院長)、秋山美紀先生(慶應義塾大学総合政策学部専任講師)とまさにオールスター。当然、内容も非常に濃いシンポジウムとなりましたのでここにご報告いたします。

 なお、私たち「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は、シンポジウムのほんの一週間前、土屋了介先生(国立がんセンター中央病院院長)の前で医学生という立場から医学教育を論じるという“怖いもの知らず”な発表*1をしたところであり、今回のテーマに共通するものを感じました。そこで、企画をなさった小原まみ子先生(亀田総合病院腎臓高血圧内科部長)に頼んで、シンポジウムにて前座を務めさせていただきました。

<「いい医師」とは?>

 亀田信介先生の言葉をお借りしますと、医学教育は「いい医師を育てるため」にあります。それでは「いい医師」とは一体何でしょうか。この単純かつ抽象的な問いに対して私たちの出した答えは、「いい医師は『うまい、えらい、つよい』医師である」というものです。

 その例として土屋了介先生、嘉山孝正先生、小松秀樹先生(虎の門病院泌尿器科部長)を挙げました。大学生が、特に東大の学生がこのようなことを言うととかく誤解を招きやすいのですが、以下に詳細を述べさせていただきます。

 我々は卒業すると医師として社会に出ます。臨床医として勤務するのであれば、腕のいい医師になりたい、こう思うのは必然です。適切な治療法を選択し、必要な技術を備えている、つまり「うまい」、これは医師として生きる以上、核になるものだと思います。上に挙げた3人の先生方も、土屋了介先生は胸部外科、嘉山孝正先生は脳神経外科、小松秀樹先生は泌尿器科、各専門領域において誰もが認める一流の臨床医です。

 次に、「えらい」について。「えらい」医師は日本全体を俯瞰しつつ、地に足がついています。日本の医療をよくしようと考えていると同時に、現場の細部まで目が行き届き、他の人への理解が深く、思いやりがあります。

 3人の先生方も視野が広く、医療問題について様々な提言・活動を行うとともに、大変温かいお人柄の持ち主です。私たち学生が会いに行った際も、ご多忙の中お時間を割いて快くインタビューに応じてくださいました。

 そして3つ目。「うまい」「えらい」医師であっても、自分の正しいと思うことを実践するには多大な労力を要します。その努力をいとわず、伴うリスクもものともしない、そのような医師を「つよい」と表しました。訴訟リスクを念頭において委縮した医療を行うのではなく、医学知識にのっとって自分の頭で考察し、正しいと思われる治療を行うことができるのは「つよい」医師です。

 実際、「うまい」「えらい」「つよい」を備えた3人の先生方は、自ら行動を起こし、世の中を変えています。土屋先生は国立がんセンターに600億円の負債があることについて週刊現代で「覚悟の告発」を行い、嘉山先生は国立大学の国からの借入金が全体で1兆円に上ることを国公私立大学大医学部長会議で発表*2しました。

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