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BMJ誌から
排卵誘発薬は卵巣癌リスクを上昇させない
5万人超の不妊症女性を対象としたコホート研究の結果

 排卵誘発薬を使用すると卵巣癌のリスクが上昇する――。そうした懸念が1970年代末から提起され、この説を支持するいくつかの疫学研究の結果が報告されてきた。だが、両者の関係を評価するために過去最大規模のコホート研究を行ったデンマーク癌疫学研究所のAllan Jensen氏らは、対象となった年齢集団(追跡期間終了時の年齢中央値が47歳)においては、排卵誘発薬使用による卵巣癌リスクの有意な上昇はないことを明らかにした。詳細は、BMJ誌電子版に2009年2月5日に報告された。

 排卵誘発薬の使用による卵巣癌リスクの上昇を報告したこれまでの疫学研究は、いずれも方法論的に問題があった。排卵誘発薬が卵巣癌リスクに及ぼす影響を調べる質の高い研究が必要と考えた著者らは、デンマークの不妊症女性コホートのデータを分析することにした。

 このコホートは、デンマークの不妊治療機関を1963年から98年に訪れた5万4362人の原発性不妊または続発性不妊の女性からなる。

 卵巣癌罹患の有無は、デンマーク癌登録とデンマーク病理登録に照会して確認。追跡期間中に193人の女性が浸潤性卵巣癌と診断された。うち、上皮性卵巣癌で不妊治療に関する情報がそろっていた156人を分析対象とした。

 コホートから無作為に選んだ女性の中から、情報が揃っていた1241人のサブコホートを対照群とした。

 主要アウトカム評価指標は、4群の排卵誘発薬(ゴナドトロピンクエン酸クロミフェンヒト絨毛性ゴナドトロピンゴナドトロピン放出ホルモン)の卵巣癌リスクに設定。交絡因子候補で調整し、排卵誘発薬使用歴のないグループと比較した罹患率比を求めた。

 95万7454人-年の追跡を実施。登録年の中央値は1989年で、最初の診察を受けた年齢は中央値30歳(16~55歳)、追跡終了時の年齢の中央値は47歳(18~81歳)だった。追跡期間の中央値は16.0年(0.0~42.6年)で、23年を超える追跡を受けた女性が25%いた。

 登録から卵巣癌診断までの期間の中央値は14.5年(0.02~34.2年)、診断時の年齢の中央値は46歳だった。

 予想通り、未産女性に比べ、経産婦の卵巣癌リスクは有意に低かった(率比0.45、95%信頼区間0.32-0.63)。1人出産ごとにリスクは減少した(率比0.68、0.47-0.99)。

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