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BMJ誌から
冷却スプレーがカニューレ挿入時の痛みを軽減
救急部門で行った二重盲検無作為化試験の結果

 急性筋損傷の痛みのコントロールなどに用いられているLPG(液化石油ガス)冷却スプレーを、局所麻酔代わりに用いることは可能だろうか。

 オーストラリアMelbourne大学のRamzi Hijazi氏らは、救急部門で末梢静脈へのカニューレ挿入直前にLPG冷却スプレーを用いる二重盲検無作為化試験を行った。この結果、臨床的に意義のある痛みの軽減が得られることが明らかになった。詳細は、BMJ誌2009年2月21日号に報告された。

 末梢静脈へのカニューレ挿入時には、約半数の患者が中等度以上の痛みを訴える。処置前には不安を感じるため、局所麻酔の適用は妥当と考えられる。現在この目的に広く用いられているのはリドカインの皮内注射だ。有効性は確認されているが、注射剤であるため、それ自体が痛みや針刺しのリスクを伴う。塗布するタイプの局所麻酔薬は、効果が見られるまでに30分から45分を要するため、救急部門においては実用的でない。

 英国とアイルランドでは、一部の医師が末梢静脈へのカニューレ挿入時に冷却スプレーを適用しているという。これまでに、静脈へのカニューレ挿入時の冷却スプレーの効果を調べた研究は複数行われたが、一貫した結果は得られていなかった。

 そこで著者らは、末梢静脈へのカニューレ挿入時の痛みの軽減にLPG使用の冷却スプレーを用いた場合の、有効性と受容性、安全性を評価するため、無作為化二重盲検試験を行った。

 試験は、成人患者を対象に、都市部の教育病院の救急部門で2007年11月から08年5月まで行った。18歳以上の患者201人(平均年齢58.2歳、54%が男性)を登録し、98人を対照群、103人を介入群に割り付けた。

 今回用いられた冷却スプレーは、プロパン、ブタン、ペンタンの混合物に香料を加えたもので、1人分のコストは0.1ユーロ程度。

 挿管の準備が整った時点で、挿管部の皮膚に、冷却スプレーまたは水(エビアン)スプレーを、12センチ離れた場所から2秒間噴霧。アルコール綿で拭いてカニューレを挿入した。スプレー噴霧から15秒以内の挿入完了を義務付けた。

主要アウトカム評価指標は、挿入時の痛みとし、挿入から1分後の時点で患者に100mm VAS(Visual analog scale)を用いた評価を依頼した。

 2次エンドポイントは、スプレーの不快感(やはりVASスケールを使用し、痛みの評価に続けて患者から回答を得た)、再度同じ処置が必要になったらスプレーの適用を望むかどうかに関する患者の判断、カニューレ挿入の初回成功率、などに設定された。

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