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鹿児島は熱かった―在宅医療推進を目指す人の熱気

2009/03/06

 今回のブログは、2月28日から3月1日にかけて鹿児島市で開催された第11回日本在宅医学会大会のレポートです。

 鹿児島を訪れたきっかけは、以前からインターネット上の友人である中野一司先生から、第11回日本在宅医学会大会の大会長を務めることになったので、医療のリスクマネジメントについての講演をしてほしいと依頼のメールがきたことです。

 気心が知れた仲で、ふたつ返事で応諾させていただいたものの、少々懸念するところもありました。中野先生と私とでは、考え方が結構異なるからです。

 私は自分が管理していたメーリングリストで、「医療崩壊」や「経済危機」「質の追求やコンプライアンス問題による現場の逼塞」などについて、悲観的な予測をしていました。しかし、中野先生は常に「ピンチはチャンス」「崩壊は創造の兆し、イノベーションが必ずわれわれを救う」と前向きな意見を表明されてきました。相反するベクトルの知人、友人としてお付き合いをしてきたのです。

「それでもいいですか?」と躊躇しながら応諾するメールを送ったものの、中野先生は「ほんじゃよろしく」といつもの調子。それから日は矢のように過ぎ、ついに当日を迎えました。雪の札幌から、南国へ。鹿児島は「暑く」もあり、「熱く」もありました。

 演題目録は「地域医療と医学教育―離島医療と在宅医療から学べるもの―」「特別シンポジウム、在宅ケアとジェンダー」「真の医療制度改革と在宅医療」「家庭看護学の現状と課題、在宅医療における実践に向けて」「多職種で展開する口腔ケアと摂食嚥下」「褥瘡治療と多職種連携―創傷・褥瘡治療の進歩を在宅へ」「四輪駆動で展開する在宅医療」「多職種連携とケアマネジメントの醍醐味―目指せトータルヘルスプランナー―」など、在宅医療だけでなく、広く医療、さらにいえば今、社会が直面している大きな問題をえぐる企画になっていました。

 私は、リスクマネジメント問題を講じる教育講演を担当しましたが、あいにく出発する直前に、雪国特有の雨漏りである「すが漏り」で自宅の天井が抜けてしまい、初日は夕方に催された懇親会に参加するのが精一杯でした。ぜひとも聞きたいと思っていた「特別シンポジウム、在宅ケアとジェンダー」も、結局聴講できませんでした。

 懇親会の会場は、明治維新の立役者の西郷隆盛が、西南戦争で討ち死にした城山の頂上にある「城山観光ホテル」でした。某ホテルにチェックインした後、時計を見ると5時過ぎ。7時の懇親会までまだ2時間近くあります。ここから城山までなら歩きでも十分に間に合いそう。西郷さんをしのんで城山を登ってみることにしました。

 天文館を抜け、学会会場の「かごしま県民交流センター」の下まではスムーズに進み、城山公園の下までたどりつきました。さて、城山観光ホテルまで登ろうとすると、登り口が分かりません。事前に調べたところ、ホテルは公園の先、山頂付近にあり、目の子はついていました。

 登り口不明のまま歩を進めると、トンネルに遭遇しました。トンネルをくぐるか、手前から登るか、もうギブアップしてタクシーに乗るか。時間はあと20分ほどしかありません。結局、ギブアップしてタクシーの運転手に「近くてごめんなさい」とおわびしつつ、10分遅れで会場に到達しました。途中で妻に電話し、地図を確認してもらったところ、トンネルの真上にホテルがあったそうです。

 10分遅れの到着でしたが、中野大会長のあいさつや、前沢政次学会長(北大教授)のあいさつなども聞くことができ、支障はありませんでした。中野先生から事前に指名のあった3分間スピーカー10数名によるちょっとしたお話から、午前中のセッションの様子を伺うことができました。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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