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ヒヤリ・ハット事例<144>
血栓予防に街の薬店でバファリンを購入して服用【全文掲載】

2009/03/30

1 処方の具体的内容は?

60 歳代、男性


<処方 1> 当院内科
バファリン 81 mg 錠1 錠1 日 1 回朝食後28 日分


2 何が起こりましたか?

  • 患者は出張に行ったときに処方されたバファリン 81 mg 錠<アスピリン・ダイアルミネート>を持参するのを忘れ、街の薬店で購入したバファリンルナ<イブプロフェン・アセトアミノフェンほか>を服用していた。
3 どのような過程で起こりましたか?

  • 患者は、心筋梗塞の既往歴があり、血栓予防を目的に小用量アスピリンとしてバファリン 81 mg 錠を継続的に処方していた。
     
  • しかし、患者は出張先で、バファリン 81 mg 錠を持参するのを忘れたことに気がついた。
     
  • そこで患者は、同じバファリンであれば同じ成分が含まれており、代用になると考え、街の薬店で OTC のバファリンルナを購入して服用してしまった。
     
  • その次の来院時に、患者が上記の経緯を話したため、本事実が発覚した。
4 どのような状態 (結果) になりましたか?

  • 処方薬と OTC のバファリンルナは成分が違う薬であることを説明したが、患者はそのことに関しては全く認識がなかった。
     
  • 幸いにして、特に有害事象はみられていない。
5 なぜ起こったのでしょうか?

  • OTC のバファリンルナと医療用のバファリン 81 mg 錠は全く別物であるが、患者は、バファリンという名前がついていれば同じ成分であると思いこんでしまった。
     
  • 医師も、処方薬を調剤した薬剤師も、普段からバファリン 81 mg の成分や、OTC のバファリンとの違いについて特に説明していなかった。
     
  • 薬店の店員(薬剤師であったかは不明)も、バファリンルナの使用目的などを尋ねることなく、患者の求めに応じて単に薬を販売してしまい、リスクマネージャーとしての機能を果たせなかった。
6 二度と起こさないために、今後どう対応しますか?

  • 一般用医薬品に同じ商品名がある医療用医薬品を処方する場合には、患者に対して、薬局や薬店で市販されている一般用医薬品とは成分や含量などが異なることを説明し、代替薬とはならないことを説明する必要があることを認識する。
     
  • 例えば、

      「今回お出しするバファリン 81 mg 錠には、血栓ができるのを抑えるアスピリンという成分が入っています。バファリンというと、街の薬局・薬店で売られているバファリンを思い出すかもしれませんが、街の薬局のバファリンと、病院のバファリン 81 mg 錠は別物です。旅行や出張などでバファリン 81 mg 錠を持って行くのを忘れても、薬局・薬店で売っているバファリンは代用にはなりませんので、使わないようにしてください。」
     
    などといった丁寧な説明も必要であろう。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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