生体吸収型ステントは金属製ステントと異なり、遅発性ステント血栓症を引き起こす危険性が少ないと期待されている。オランダErasmus Medical CenterのPatrick W Serruys氏らは、30人の患者に生体吸収型エベロリムス溶出ステントを適用したABSORB試験の2年時の結果を発表した。心血管有害事象は1件のみで、ステント・ストラットの34.5%が吸収されていたという。詳細はLancet誌2009年3月14日号に報告された。
従来型の薬剤溶出ステントは、ベアメタルステントに比べて遅発性ステント血栓症が発生しやすいことが問題だった。また、薬剤溶出型かベアメタルステントかに関わらず、金属製ステントを留置すると、血管腔の拡張が妨げられ、外科的な血行再建術が困難になり、マルチスライスCTやMRIによるイメージングの適用が難しくなる。
著者らは、必要な期間は血管壁を支持し、その後消失する生体吸収型ステントに薬剤溶出機能を付与した生体吸収型エベロリムス溶出ステント(BVS)を冠疾患患者に適用し、安全性を調べるオープンラベルの前向き試験ABSORBを行った。
今回用いられたのは、ポリ-L-乳酸(PLLA:脂肪族ポリエステル)製のステントに、エベロリムスを含有しその放出を制御できるポリD、L乳酸コーティング剤を塗布したもので、完全生体吸収性の素材からなる。それらは、最終的には乳酸まで分解されクエン酸回路を経て代謝される。
ABSORB試験の12カ月までの安全性その他に関する結果は、2008年にLancet誌に報告されている(Lancet 2008;371:899-907.)。
2006年3月7日から7月18日まで、4カ所の医療機関で、安定狭心症または不安定狭心症、もしくは無症候性心筋虚血で18歳以上の、新規1病変患者を登録。
対象血管径は3.0mmで、病変長が8mm未満なら12mmのステント、14mm未満なら18mmのステントを使用した(実際に18mm適用は2例のみ)。径狭窄率は50%超~100%未満で、TIMI血流分類はグレード1超を組み込み条件とした。
除外条件は急性心筋梗塞、左室駆出分画30%未満、左冠動脈主幹部の病変、直径2mm超の側枝の病変など。
全員にアスピリン(試験期間中)とクロピドグレル(6カ月以上)を投与した。
定量的冠動脈造影、血管内超音波検査、マルチスライスCT、光コヒーレンス・トモグラフィー(OCT)などのイメージングを用いて追跡。臨床エンドポイントの評価は、6カ月後、1年後、2年後に実施した(追跡は5年まで行われる予定)。
エンドポイントは、心臓死、心筋梗塞、虚血由来の標的病変血行再建術を合わせた複合イベントに設定された。
新規に会員登録する
会員登録すると、記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。