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6000人規模の安全性・免疫原性試験の結果公表
新型インフルエンザワクチンの安全性を追認

 新型インフルエンザの感染防御効果が期待されるプレパンデミックワクチン(プレワクチン)の安全性などについて、6000人規模の臨床試験を実施していた厚生労働省の研究班(研究代表者:国立病院機構三重病院院長の庵原俊昭氏)が4月6日、試験の結果を発表した。

 発表によると、今回の試験で(1)6000人規模の試験においても、これまでの小規模試験で確認されていない副作用の発生は見られなかった、(2)既知の副反応の発生率は小規模試験の結果とほぼ同じだった、(3)あるH5N1型の株(例えばベトナム株)のプレワクチンを2回接種した後に、別のH5N1型の株(例えばインドネシア株)を1回接種すると、接種した株以外の株にも交差免疫性が獲得できた──の3点が分かった。厚労省は、このデータを基に同省の新型インフルエンザ専門家会議などでプレワクチンの安全性や有効性を議論し、事前接種の是非について結論を出すとしている。

 国は現在、新型インフルエンザの発生前に医療従事者や社会機能維持者などにプレワクチンを接種することを検討している。それを見据えて、承認時の試験では確認できなかった可能性のある、発生頻度の低い副反応について知見を得ておくことが、今回の試験の主目的だった。

 2006年に行われたワクチン承認のための臨床試験(治験)では、ワクチン1種類当たりの被験者は300人にすぎなかった。そのため、1%以下の低頻度で発生する副反応があったとしても確認することができなかった可能性がある。6000人(1種類当たり3000例ずつ)規模の試験であれば、治験では判断できなかった0.1%以上の発生率の副反応の有無を確認できるという。

 今回の試験では、医療従事者や検疫所職員など計5561人(安徽株〔北里研究所製〕2835人、インドネシア株〔阪大微生物病研究会製〕2726人)を対象にワクチンを接種したところ、1回目接種時から2回目接種後30日以内の観察期間中に入院が必要な重篤な有害事象が起こった人は8人いた。このうち、「ワクチン接種後9時間で発熱・喘息を引き起こした27歳男性」と、「ワクチン接種後4時間で四肢末梢の痺れ感を訴えた40歳男性」の2例については、接種後に短時間で発熱を来したことから、ワクチン接種との因果関係がありそうだと研究班は判断している。

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