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Lancet誌から
高感度CRPもスタチン治療の指標になり得る
JUPITER試験の分析結果

 スタチン治療による心血管イベントリスク低減効果を予測する際に、LDL-コレステロールLDL-c)値に加え、高感度CRPhsCRP)値も指標になり得ることが、JUPITER試験の参加者データの分析で明らかになった。米国Harvard大学医学部のPaul M. Ridker氏らが、Lancet誌2009年4月4日号に報告した。

 スタチンは、LDL-c値と共に炎症のバイオマーカーであるhsCRPの値も低下させる。抗炎症効果とLDL-c低減作用はアテローム血栓症に対して好ましい影響を与えると考えられるが、hsCRPレベルの低下が臨床転機を向上させるかどうかについては明らかではなかった。

 著者らは、スタチン投与によるLDL-c値とhsCRP値の低下とアウトカムの関係について知るために、JUPITER試験のデータを利用した。

 二重盲検の無作為化試験JUPITER試験は、脂質正常でhsCRP高値の人々において、ロスバスタチンが初回心血管イベントの発生率を下げるかどうかを評価したものだ(関連記事はこちら)。

 対象は、LDL-c値が130mg/dL未満で、高感度CRP(hsCRP)が2mg/L以上の男女で、主要エンドポイントは、初回の主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術の施行、不安定狭心症による入院、心血管死亡を合わせた複合イベント)に設定されていた。

 今回は、hsCRP値とLDL-c値がイベント発生率に及ぼす影響を調べるために、ベースラインと1年後のhsCRP値とLDL-c値が明らかだった男女1万5548人(全体の87%)を分析対象とした。追跡期間は最大5年(中央値は1.9年)で、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、動脈血行再建術施行、心血管死亡を合わせた複合イベントをエンドポイントとした。

 1万5548人のうち、偽薬群は7832人(平均年齢66.0歳、女性が37.8%)だった。そのうち、LDL-cが70mg/dL未満、hsCRPが2mg/L未満という目標を達成したのは106人(1%)のみ。さらに、LDL-c70mg/dL未満とhsCRP1mg/L未満を達成したのは29人のみで、これらのほとんどが、割り付けられた治療とは別にスタチンを使用していた。

 ロスバスタチン群については、LDL-cとhsCRPの目標達成の有無に基づいて対象者を層別化した。LDL-c値が70mg/dL以上は2110人(65.0歳)、70mg/dL未満が5606人(66.0歳)、hsCRPが2mg/L以上が4305人(66.0歳)、2mg/L未満が3411人(66.0歳)。また、hsCRPが2mg/L未満でLDL-cが70mg/dL未満が2685人(66.0歳)、hsCRPが1mg/L未満でLDL-cが70mg/dL未満が944人(65.0歳)だった。

 目標となるLDL-c70mg/dL未満またはhsCRP2mg/L未満を達成した人々は、非達成者に比べ、ベースラインのhsCRPまたはLDL-cのレベルが低かった。

 LDL-c値の低下とhsCRP値の低下の間の相関は小さかった(r=0.10)。同様にhsCRPの達成値とアポリポ蛋白質Bの達成値(r=0.10)、hsCRP達成値とアポリポ蛋白質B/アポリポ蛋白質A1比の達成値(r=0.16)の間の相関も小さかった。

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