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129番通報、韓国で、信州で

2009/04/20

 世界同時不況が長期化、深刻化して恐慌化しつつある。
 格差がもたらす貧困や生活の破綻に対して、従来の枠組にとらわれず、
 なんとか手を差し伸べようとする動きが活発化している。
 今回は、そんな国内外の例をご紹介したい。

 まず、韓国政府が、自国民だけでなく、在韓外国人にも行っている
 「保健福祉コールセンター129番」。

 韓国内で局番なしに129番に電話をかけると、
 専門職員が、基礎生活保障や年金などの所得保障から、
 障害者福祉、保育・教育問題、
 ガン患者支援や予防接種などの医療分野、さらに幼児虐待や自殺、
 薬物中毒などの緊急支援などの相談にのるという制度だ。
 急を要する緊急支援については、1年365日、24時間体制で
 相談に応じているという。

 実際に129番で、どんな相談が行われているかは、まだ伝わってこないのだが、
 国を挙げて社会福祉全体を視野に入れた
 緊急コールセンターを設けたことは、大きな一歩だろう。

 そんな韓国の国家的な取組みと好対照なのが、日本の草の根支援活動。
 市民団体「山谷(やま)農場」を主宰する藤田寛さんは、
信濃のフードバンク』という路上生活者への支援活動を一人で10年間続けてきた。

 信州で余った農産物を無償で譲り受け、
 東京や広島で行われる路上生活者の炊き出しへ送り届ける。

 当初は信州佐久の地元の人の共感を得るのに苦労した。
「貧困なんてアフリカの話だろう。
 新宿で昼間から酒を飲む連中と貧困を結びつけるのはおかしい」
 と言われたこともあるという。

 しかし、地道に10年続けているうちに年間10トンもの
 コメが寄せられるようになった。
 信州は食べ物の供給源となった。

 ところが、「派遣切り」が拡がるにつれて、
 信州内にも食糧支援を求める現場が生まれたのだった。

 雇用契約の解除や期間満了で失業した日系ブラジル人など
 外国籍県民の困窮ぶりは深刻の度合いを増している。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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