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「褒めて育てる」のよくある誤解

2009/04/20
米田勝一

 部下への指導は、子供に対する教育と似ているところがあると思いませんか?

 子供の教育は、駄目な面ばかりを叱るのでは、なかなかうまくいきません。愛情を持って、良い面を探し出し、褒めることを意識しながら育てるといいといわれます。そう接する中で、悪い部分は少しずつ直していく。その方が、子供は自信を失わず、楽しく生き生きと成長していけると考えています。

 その点では部下も同じ。上司から注意ばかりされていては、毎日が憂鬱で、仕事に対する意欲も自信も無くなってしまうでしょう。新しい発想を上司に伝える気力も失い、結果的に、組織にとってはマイナスになるのではないでしょうか?

 しかし、ダメなときは毅然とした態度で、上司としての考えや要望を伝えることも必要です。部下に好かれようと思うばかりに、必要なときにしっかりとした注意や指示を行えなければ本末転倒。組織の統制を保つ意味からも、好ましくありません。

 その点も、子供の教育とよく似ています。子供の顔色ばかり伺って甘やかすのではなく、いけない事をしたときはきちんと叱り、親の意見を伝えることが大切なのと同じです。

 私は部下を注意したり、叱ったりするときには、次のことに留意しています。

 まず、あまり細かいことまで口うるさく言わないように心がけています。そうした注意は、多くの場合、部下と立場が近い先輩などに任せます。しかし,組織の体制に大きくかかわるようなことは、きちんと話して理解してもらうようにしています。

 次に場所。注意や指導は、なるべく皆の前ではなく、個別に呼んで行うようにしています。部下にも当然、プライドがあります。私自身も、皆の前でダメ出しされるよりは、他の人がいない場所でこっそりと注意されたいと思います。皆の前で厳しく叱ることは、「恐怖政治」にもつながりかねません。

 ただし、注意や叱るというよりは、指示の意味合いが強い場合は、皆の前で行います。その方が、上司としての意思が同時に皆に伝わりやすいからです。それぞれの局面で上司がどのように考え、どのように判断し、どちらに向かおうとしているかは、折に触れ周知させる必要があるからです。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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