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NEJM誌から
透析患者にスタチンを投与しても心血管リスクは低下せず
25カ国で行われた無作為化試験AURORAの結果

 スタチンは心血管リスクが高い患者の心血管イベント発生率を低減する。しかし、血液透析を受けているハイリスク患者に対するスタチンの利益は明らかではなかった。国際的な二重盲検の多施設無作為化試験AURORAを行ったスウェーデンUppsala大学のBengt C. Fellstrom氏らは、血液透析を受ける腎疾患患者にスタチンを投与すると、LDLコレステロール(LDL-c)値は低下するが心血管リスクの低減は見られないことを明らかにした。詳細は、NEJM誌2009年4月2日号に報告された。

 透析患者の心血管リスクは高い。しかし、進行した腎疾患患者にはLDL-c値上昇が見られないといった報告もあり、スタチンの適用については議論があった。また、腎疾患患者に対するスタチンの利益を示した観察研究はあるが、大規模な無作為化試験で得られたエビデンスはなかった。

 著者らは、2003年1月から04年12月に、25カ国の280医療施設で、血液透析または血液濾過を3カ月以上受けている50~80歳の末期腎疾患患者2776人を登録。無作為にロスバスタチン10mg/日(1391人、平均年齢64.1歳)または偽薬(1385人、64.3歳)に割り付けた。

 主要エンドポイントは、心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中からなる複合イベントに設定。無作為割り付けが適切に行われなかった3人を除く2773人を対象に、intention-to-treat分析を行った。

 ベースラインのLDL-c値の平均は100mg/dLだった。割り付けから3カ月の時点で、ロスバスタチン群のLDL-c値は平均42.9%低下していた。偽薬群では1.9%の低下だった(p<0.001)。

 総コレステロール値もロスバスタチン群で26.6%低下、偽薬群では0.5%低下(p<0.001)。トリグリセリド値はそれぞれ16.2%と0.9%低下していた(p<0.001)。HDLコレステロール値は2.9%増加と0.8%増加(p=0.045)。高感度CRP(hsCRP)値の中央値はロスバスタチン群では11.5%減少、偽薬群では逆に増加していた(p<0.001)。

 試験設計に従って、イベント発生が620例になるまで追跡。追跡期間の中央値3.8年(平均は3.2年)で、脱落はゼロ、死亡は1296人となった。死因が明らかだったのは1164人で、648人が心血管死亡だった。

 440人(ロスバスタチン群207人、偽薬群233人)がエンドポイントに設定されたイベントを含む有害事象により治療を中止し、370人(ロスバスタチン群197人、偽薬群173人)は腎移植を受けるためにこれら薬剤の使用を中止していた。試験薬使用期間の平均は2.4年だった。

 主要エンドポイントに設定された複合イベント発生は804人で、ロスバスタチン群が396人、偽薬群は408人だった。100人-年当たりの発生率は9.2と9.5で、偽薬群と比較したロスバスタチン群のハザード比は0.96(95%信頼区間0.84-1.11、p=0.59)となった。

 主要エンドポイントを構成する個々のイベントについても、ロスバスタチンは有意な影響を示さなかった。心血管死亡は100人-年当たり7.2と7.3(p=0.97)。非致死的心筋梗塞は2.1と2.5(p=0.23)、非致死的脳卒中は1.2と1.1(p=0.42)。

 割り付けられた薬剤の使用を続けていた患者のみを対象とするper-protocol分析でも、ロスバスタチンの利益は示されなかった。

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