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Lancet誌から
ボグリボースが耐糖能異常者の糖尿病発症を40%低減
日本で1780人を対象に行われた無作為化試験の結果

 耐糖能異常を示す日本人に、生活改善に加えてα-グルコシダーゼ阻害薬ボグリボースを投与すると、2型糖尿病発症リスクが40%低下する――。順天堂大学医学部の河盛隆造氏らが行った無作為化試験で、そのような知見が得られ、Lancet誌電子版に2009年4月22日に報告された。耐糖能異常を示す日本人患者を対象に、薬物療法の影響を調べた研究はこれが初めて(関連記事はこちら)。

 この二重盲検の並行群間試験は、日本国内の103施設で行われた。2003年4月に以下の条件を満たす患者の登録を開始した:空腹時血糖が6.9mmol/L(124.2mg/dL)未満、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間後の血糖値が7.8mmol/L(140.4mg/dL)~11.0mmol/L(198mg/dL)、HbA1cが6.5%未満、さらに以下の2型糖尿病危険因子を1つ以上保有する30~70歳の男女。
 ・正常高値血圧(収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上)または高血圧治療中
 ・脂質異常症(総コレステロール値5.7mmol/L〔220.59mg/dL〕以上、トリグリセリド1.7mmol/L〔150.4mg/dL〕以上、またはHDLコレステロール値1.04mmol/L〔40.2mg/dL〕未満)
 ・過体重または肥満(BMI 25以上)
 ・糖尿病家族歴(1親等または2親等に糖尿病患者)

 以上の条件を満たした1780人(平均年齢55.7歳、男性が60%)を、無作為にボグリボース0.2mg(897人)または偽薬(883人)に割り付け、1日3回投与した。割り付け時には、危険因子(組み込み基準に記載された危険因子+OGTTの2時間値が9.4mmol/L〔169.2mg/dL〕から11.0mmol/L〔198mg/dL〕)の保有数が2つ以下か3つ以上かで患者を層別化し、割り付け群間でそれらの割合が同じになるよう調整した。また、試験薬の投与開始前4~8週間には、食生活と運動に関する助言を与え、その後、受診のたびに指導遵守状況を評価した。

 主要エンドポイントは、2型糖尿病発症に設定。HbA1c値が6.5%以上で、以下の3つの条件を1つ以上満たす場合を、2型糖尿病発症と判定した。OGTTの2時間値が11.1mmol/L(199.7mg/dL)以上、空腹時血糖が7.0mmol/L(126mg/dL)以上、ランダムに測定した血糖値が11.1mmol/L(199.7mg/dL)以上(いずれも期間をおいて2回見られた場合とする)。

 2次エンドポイントは、血糖値が正常化した患者の数。正常血糖は、OGTTの2時間値が7.8mmol/L(140.4mg/dL)未満で、空腹時血糖が6.1mmol/L(109.8mg/dL)未満に設定。

 主要エンドポイントまたは2次エンドポイントを達成した患者については、試験薬の投与を中止した。正常血糖となった患者については、試験期間終了まで追跡した。

 12週ごとに空腹時血糖、HbA1c、血中脂質量を測定し、生化学的検査を行った。血圧、体重を測定し、服薬遵守状況も調べた。OGTTは24週ごとに実施した。

 06年10月までに収集された1778人のデータを基に、07年3月に行われた中間解析で、ボグリボースが2型糖尿病への進行のリスクを有意に低減する(p=0.0026)ことが明らかになったため、データ監視委員会は試験の早期中止を決定した。

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