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JAMA誌から
心不全患者の運動療法の利益はさほど大きくない
無作為化試験HF-ACTIONの結果

 心不全患者に対して運動療法を行っても、死亡や入院のリスク低減は中程度にとどまる――。そんな結果が、米国Duke大学のChristopher M. O'Connor氏らが行った過去最大規模の無作為化試験HF-ACTIONにより得られ、JAMA誌2009年4月8日号に報告された。

 欧米とカナダの心臓学会は、病状が安定している外来管理の心不全患者には運動療法の実施を考慮するよう勧めている。これは、運動療法が心不全患者に生存利益をもたらし、入院リスクを低減することを示したメタ分析の結果などに基づくものだ。しかし、運動療法の有効性について調べたこれまでの研究は、臨床転機に対する影響を評価するのに十分な統計学的パワーを持っていなかった。

 心不全患者に対する運動療法の有効性と安全性を調べる、より大規模な研究が必要と考えた著者らは、多施設無作為化試験HF-ACTIONを実施した。米国、カナダ、フランスの82医療機関で、2003年4月から07年2月に、左室駆出分画が35%以下、6週間以上にわたって最適な治療を受けていてもNYHAのクラスIIからIVの症状を示す心不全患者のうち、病状が安定し、外来で管理されている2331人を登録した。

 まず、全員に心肺運動負荷試験を行い、安全な運動療法が困難と考えられるレベルの不整脈または心筋虚血がある患者を除外。その上で、それぞれの患者に適切な運動レベルと運動中の心拍数域を決定した。

 条件を満たした患者を1:1で、ガイドラインに基づく通常のケア+有酸素運動(グループベースの指導セッションと自宅での運動、1159人)、または通常ケアのみ(1172人)に割り付けた。

 指導セッションは週3回、計36回行った。ウォーキングや、トレッドミル、バイシクルマシンなどを利用した運動を当初は1回に15~30分行った。強度は、予備心拍数(HRR: 最大心拍数と安静時心拍数の差)の60%に設定。6回のセッションが終わった時点で運動時間を30~35分に延長し、強度もHRRの70%に変更した。18回のセッションが終わった時点で家庭での運動も開始。36回のセッション終了後は同じ運動を家庭で継続するよう指導して必要な機器を貸与した。家庭では、週に5回、40分間、HRRの60~70%の運動を実施することを目標とした。

 通常ケア群にはガイドラインに沿った治療を行い、自己管理法について教えるブックレットを配布した。

 主要アウトカム評価指標は、全死因死亡または入院からなる複合イベントに設定。2次評価指標は、全死因死亡、心血管死亡、心血管疾患による入院、心不全による入院などとした。

 年齢の中央値は59歳。28%が女性で、左室駆出分画の中央値は25%だった。37%がNYHAのクラスIIIまたはIVだった。心不全の病因としては心筋虚血が51%を占めた。45%の患者が埋め込み型除細動器または両心室ペースメーカーを使用していた。

 追跡は08年3月15日まで行われた。追跡期間の中央値は30.1カ月。介入群のうち736人が、36回の指導セッションを中央値3.9カ月で完了していた。

 指導遵守率は、1週間の運動時間の合計を基に評価。4カ月から6カ月は運動時間の中央値は95分/週、10カ月から12カ月には74分/週で、その間の目標値は120分/週だった。3年目には50分/週になっていた。全期間を通じて、目標値以上の運動を実践していた患者は全体の約30%だった。

 対照群にも自主的に運動を継続していた患者が約8%いた。

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