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Lancet誌から
創傷治癒促進と瘢痕化予防にavoterminが有効か
フェーズ1/2試験3件の結果

 皮膚の瘢痕化の機序を調べる研究の中で、トランスフォーミング増殖因子β3(TGFβ3)の関与が明らかになり、この分子が瘢痕化の予防と治療に役立つと期待されるようになった。英国Manchester大学のMark WJ Ferguson 氏らは、組み換えヒト活性型TGBβ3製剤avoterminの予防的投与の影響を調べる臨床試験を3件行い、忍容性と有効性を示す結果を得た。詳細はLancet誌2009年4月11日号に報告された。

 今回用いられたのは、英国Renovo社の商品名「Juvista」。先に行われたフェーズ1試験では、皮内投与(50~10000ng/3mmパンチバイオプシーによる創傷)の忍容性が示されるとともに、avoterminが創傷治癒過程に悪影響を及ぼさないことが明らかになった。投与後2~4時間の間に全身性にTGFβ3が検出されないことも確認された。だが、最大耐用量は見い出されなかった。

 今回報告されたのは、予防的投与の有効性と安全性の評価を目的としたフェーズ1/2試験3件(Study1002、Study1005、Study0036)の結果だ。すべての試験はRenovo社の臨床試験ユニットで行われた。Study1002は2003年9月、Study1005は03年6月、Study0036は07年8月に終了している。

 年齢によって瘢痕化の程度が異なるという報告もあるため、試験によっては、被験者の年齢層を限定した。

 Study1002はフェーズ1/2二重盲検無作為化試験。18~45歳の健康な男性(BMIは15~55)を登録した。全員の上腕1の内側面に1cm長の全層皮膚欠損創を2カ所、上下に3cm離して作製。2カ所のうちの一方を治療創、もう一方を対照創とした。上腕2にも同様に創傷を作製し、上下を逆に治療創と対照創に割り付けた。対照創には偽薬または標準ケアを適用。

 創傷縁1cm当たりの用量は0.25、1、5、20、50、100、500ng/100μLとし、無作為にいずれかに割り付けた。これらの用量はラットモデルで有効性が確認されたものだ。

 上腕1への投与は、0日目(創作製前)と1日目、3日目(組織標本を創部から切除する前)、4日目とし、上腕2は、瘢痕化に対する影響を調べるために0日目と1日目に投与し、切除は行わなかった。

 Study1005は二重盲検の無作為化フェーズ2。60歳以上の健康な男女(体重は50~150kg、BMIは15~35)を登録。両方の上腕に1cm長の全層皮膚欠損創を作製し、一方をavoterminに、もう一方を偽薬に割り付けた。用量は、創傷縁1cm当たり5、50、100ng/100μLとし、創作製前と24時間後に投与した。

 これら2件の結果を基にStudy0036を設計した。

 二重盲検の無作為化フェーズ2試験Study0036は、18~85歳の男女(BMI15~35)を登録。両方の上腕内側面に1cmの創を4カ所ずつ作製。4カ所の傷をそれぞれ4通りの用量(5、50、200、500ng/μL)に割り付け、もう一方の腕の解剖学的にマッチする創を対照創とした。

 投与スケジュールは2通りで、登録患者を1:1で割り付けた。全員に創作製の10~30分前に皮内投与を実施。グループ1には、1回目の投与から約24時間後に2回目の投与を行い、グループ2は、創閉鎖から10~30分後に2回目の投与を受けた。

 創作製前の投与は、13mmの注射針を創予定部位に沿って挿入、1cmの予定部位全体に薬剤を注入できるように針を引きながら注射した。

 1002と1005では創作製後、皮内縫合して3M社のSteriStripsテープで固定。0036試験では、2カ所を断続縫合しSteriStripsで固定した。すべての試験でドレッシングには3M社のテガダームを用いた。

 創作製後の投与は、両側の創傷縁に、創傷全体に薬剤が行き渡るよう注射針を引きながら100μLずつ注入した。

 評価は、瘢痕部分のデジタル画像を対象にVASスコアを用いて行った。VASスコアは、0が正常な皮膚、100は深刻な状態の瘢痕を意味する。

 主要エンドポイントは、1002と1005では創傷作製から6カ月時と12カ月時、0036では創傷作製から6週から3~7カ月の時点の瘢痕の状態に設定された。有効性の分析はintention-to-treatで行った。

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