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BMJ誌から
臓器提供に親族の同意を得るために重要な要因とは
十分な情報提供、コーディネーターとの信頼関係などがカギ

 臓器の提供を待つ患者は大きく増加しているが、提供者はほとんど増えていない。提供を妨げている要因に、親族の拒絶がある。英国John Radcliffe病院のArabella L Simpkin氏らは、脳死となった患者の臓器提供に関する親族の判断に影響を与える因子を同定するための系統的レビューを実施。臓器提供過程とその利益に関する適切な情報提供や、ドナーに対する質の高い治療などが、拒否の頻度の低下に関係することを明らかにした。論文は、BMJ誌2009年5月2日号に掲載された。

 著者らは、データベース(Medline、Embase、CINAHL)に2008年4月までに登録された研究から、条件を満たす20件の観察研究を選出した。無作為化比較試験はなかった。

 研究は、臓器提供を拒絶した人々と同意した人々の特性を比較した研究と、同意の前後で変化した要因について報告している研究の2種類に分けられた。メタ分析に適したデータを含む研究はなかったため、著者らは、提供依頼に対する同意または拒絶に関連するすべての修飾可能な要因についてレビューし、p≦0.05となったすべての要因と、統計学的分析結果を示してはいないものの、研究者たちが親族の判断に関係すると見なした要因を報告している。

 まず、臓器提供の判断に影響を与える要因を、以下の6つのカテゴリーに分類して分析を進めた。
 ・提供依頼の際に話し合われた情報
 ・ドナーへのケアの質に関する認識
 ・脳幹死に関する理解
 ・提供依頼のタイミング
 ・提供依頼が行われたときの状況
 ・依頼を行う人が用いるアプローチと経験

 Siminoff氏らの研究は、420人の臓器提供可能な患者を対象にしていた。提供するかどうかの判断に関係していた要因は、提供に関わる費用に関する情報、提供が葬儀の準備に及ぼす影響、どの臓器を提供するのかを親族が選択できることの保証、となっていた。医療者が、提供によりほかの患者の命を救うことができる可能性について説明すると、親族が提供に同意する可能性は高まった。逆に、提供に関する質問を促すと同意は得られにくくなった。

 ほかの研究でも、情報に基づく意思決定を可能にする十分な情報が提供されたと親族が考えた場合に、同意率が有意に高まると報告されていた。特に、提供により通常の葬儀が行えなくなる可能性はない、との説明は重要だった。

 3件の研究が、入院中に患者に行われた治療の質を親族がどう考えているかが臓器提供の意思決定に影響することを示していた。治療の質に不満がある場合には提供への同意率は低下した。

 5件の研究が、脳幹死に関する親族の理解度と提供への同意の間に有意な関係が存在すると報告していた。たとえば、71家族を対象に調査したところ、提供に同意した48家族(68%)は、同意しなかった23家族(32%)より脳幹死について深く理解していたという。

 Jenkins氏らは、核医学的イメージングにより脳血流の変化を客観的に示したところ、提供に同意する親族の割合が44%から71%に上昇したと報告している。

 9件の研究が、死亡宣告と脳幹死の受容、そして、臓器提供依頼の間に、時間的な間隔(分離)が必要であることを示した。最も重要なのは、提供依頼が脳死の宣告または脳死判定と同時に行われないことだった。Niles氏とMattice氏の研究では、臓器提供依頼に対する同意率は、脳死の前(62%)と後(57%)で差がなかったが、死亡の告知と同時だった場合には顕著に低かった(25%)。

 また、意思決定のための時間を十分に与えることも重要だった。親族間で話し合う時間が十分にあったという家族の60%が提供に同意し、十分な時間がなかったと答えた家族では提供への同意は27%に留まった。

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