日経メディカルのロゴ画像

 食道や大腸といった消化管癌の早期発見に有用とされているNBI(Narrow Band Imaging)システムが、膀胱癌の診断においても有用であることが分かった。第97回日本泌尿器科学会総会で、九州大学泌尿器科学分野の立神勝則氏が発表した。

 NBIシステムは、生体内への光の深達度が波長によって違うことを利用し、深達度の浅い2種類の短い波長の光のみを抽出する特殊なフィルターを用いたシステム。表層の粘膜肥厚や癌の増殖に伴う血管新生の様子を観察しやすいのが特徴だ。

 対象は、尿細胞診か内視鏡を含む画像診断で、膀胱癌が疑われた患者104人。まず通常の膀胱鏡による観察を行って異常部位の位置を記録、その後、NBIシステムを用いた観察を行い、同様に異常部位の位置を記録する。異常部位を生検し、病理学的評価を行ってそれぞれの観察による感度や特異度を調べた。

 総生検数は314カ所だった。異常所見が観察され、病理学的にも腫瘍が存在したのは通常観察では66カ所、NBIシステムでは105カ所。また、膀胱鏡観察では異常所見なしとみなしたが、病理学的には腫瘍が存在したのは通常観察では47カ所だったのに対し、NBIシステムでは8カ所にとどまった。

 通常の膀胱鏡は感度58.4%、特異度87.1%、陽性反応的中率71.7%、陰性反応的中率78.8%、陰性尤度比0.48だった。NBIシステムは感度92.9%、特異度71.6%、陽性反応的中率64.8%、陰性反応的中率94.7%、陰性尤度比0.10だった。また、尿細胞診の結果と膀胱鏡観察結果を組み合わせて検討したところ、細胞診とNBIシステムの感度は100%となった。

 「NBIは、特異度では通常観察に劣るが、非常に感度が高い。簡便な検査法でもあり、膀胱癌が疑われる外来受診者に対して、尿細胞診と組み合わせて除外診断に用いるといった方法が有用と考えられる」と立神氏は話した。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ