顧客から評価される「ビジネスの品質」を創り出せる「できる組織」のカギは、ミドルが握っている。トップダウンでもボトムアップでもなく、ミドルが経営(トップ)と現場(ボトム)を連結するピンの役割を果たし、組織全体を一体にして動かすマネジメントが求められる。

 品質の維持が難しくなっている。こうした声をあちらこちらで耳にする。

 日本企業の多くは、商品やサービスの品質に対して強い関心を持っており、古くはQC活動、あるいはISOの品質マネジメントシステムといった仕組みに取り組み、多額のコストをかけてきた。しかし、商品が複雑になるにつれ、従来のやり方だけで品質を維持することが難しくなっている。ここで「商品が複雑になる」とは、商品それ自体が一つのシステムになることを意味する。

 例えば、センサーを作ってきた会社が、顧客や市場の求めに応じて、センサーに加えて、計測・データ収集装置を作る。こうしたことが現実に起こっている。センサーであれば、センサーそれ自体をしっかりチェックすれば市場が要求する品質の製品を出荷できたし、製造プロセスを磨き上げることによって、さらに品質を向上できた。

 ところが、センサーを組み込んだ計測・データ収集装置になると、それまでの製品単体にこだわった品質改善の取り組みだけでは十分ではない。そもそも1社だけで装置の全体を作れないから、固定した製造プロセスを確立しにくい。機能が複雑になるので検査も難しい。しかも、計測装置の顧客ごとに特殊な利用方法が求められることもあり、その場合は個別の検査が求められる。

情報システムの品質は顧客が決める

 このような複雑な“商品”の典型例が情報システムである。情報システムの担当する情報システム部門と、実際の開発を請け負うシステムインテグレータは、品質に関して次の二点を確認する必要がある。一つは、品質の向上が難しい案件であることを踏まえた上で、それでも品質を向上させることが最大のミッションである、ということだ。

 情報システム部門あるいはシステムインテグレータが提供しているのは、情報システムというモノと、そのモノによって得られるビジネスの付加価値である。モノの品質は最終的には、システムを利用してその企業が遂行したビジネスの品質に吸収される。

 情報システムの品質、そしてそれを使うビジネスの品質を決めるのは、当然ながら顧客である。ただ、情報システムの品質を考える際に出てくる、性能、信頼性、整合性、耐久性、保守性、デザイン、顧客満足といった諸要素は、顧客がインテグレータと相談の上で決定していく。

 情報システムの品質を巡って確認すべきもう一つの点は、情報システムの品質は開発現場だけで維持されている訳ではない、ということだ。情報システムを手掛けるインテグレータも、組織全体で品質を追求しなければならない。

 それは品質マネジメントの先進業界である製造業を見れば分かる。品質に定評のある企業は例外なく、現場の品質をあげるために組織全体が動いている。品質管理活動、技術支援、管理技術の開発や運用の支援はもちろん、評価の仕組みや人事制度に至る、すべてが現場の品質を実現するために方向付けられている。言い換えると、製造業は現場の品質を組織全体で支えている。