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BMJ誌から
降圧治療の「失敗」判定、半年後では早すぎる
アジア、欧州などで行われた無作為化試験の分析結果

 降圧治療を行う場合、患者の治療への反応を正確に知ることが必要だ。オーストラリアSydney大学のKatherine Keenan氏らは、降圧治療の開始後3カ月時点の血圧をベースラインとした場合、その6カ月後の血圧測定値は一過性の変動の影響を受けやすく、治療を受けながら血圧が上昇した患者を同定できる確率が低いことを明らかにした。治療の成否の評価は、より時間を経た時点の測定値を指標にした方がよさそうだ。詳細は、BMJ誌2009年5月23日号に報告された。

 降圧治療を開始した患者には、外来での定期的な血圧測定が行われる。治療に対する反応を調べて、必要なら治療戦略を変更する必要があるからだ。しかし、血圧は変化しやすく、「ノイズ」のなかから実際の血圧上昇を示す「シグナル」を見いだすことは難しい。「ノイズ」を指標として治療方針を変えれば、過剰治療に結びつく恐れがある。

 著者らは、降圧治療中の患者の血圧測定値の変動がどの程度あるのかを知り、実際に治療が十分でない患者を見いだすために役立つ測定のタイミングを明らかにしようと考え、アジア、オーストラリア、欧州の172施設で行われた無作為化試験PROGRESS(Perindopril pROtection aGainst REcurrent Stroke Study)の結果を分析した。

 分析の対象になったのは、PROGRESSに登録され、介入群に割り付けられて、2種類の降圧薬の投与を受けた患者だ。脳卒中歴または一過性脳虚血発作歴のある患者1709人が、ペリンドプリル4mg/日+インダパミド2.0~2.5mg/日に割り付けられた。

 血圧は、水銀血圧計を用いて5分間隔で2回測定、平均値を求めた。割り付け後は、3カ月、6カ月、9カ月、15カ月、21カ月、27カ月、33カ月の時点で測定。今回は、3カ月時の測定値を治療によって達成される血圧とし、ここを起点にその後の変動を調べた。

 測定値は、実際の血圧に短期的(数日~1週間)な変動が加わった値を示すと考えられる。短期的な変動は、測定時の技術的な誤りに起因する場合と、患者自身の個人内変動を示す場合があるだろう。

 割り付け時の血圧の平均値は149mmHgと87mmHgで、割り付けから3カ月後には133mmHgと80mmHgになっていた(1709人の患者が測定を受けた)。これをベースラインの血圧値とし、その後の測定値と比較したが、血圧の平均値は追跡期間中ほとんど変化していなかった

 だが、ベースラインと比較した血圧差の分散は時間経過とともに拡大していた。収縮期血圧の場合、SDは、ベースラインから3カ月目が3.8mmHg、15カ月目が9.8mmHg、33カ月目は11.8mmHgとなった。拡張期血圧のSDは、3カ月目が2.7mmHg、15カ月目が5.1mmHg、33カ月目が6.6mmHgだった。

 各測定時の分散の変化を利用して、測定値の上昇が実際に治療失敗を示す可能性を推定した。

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