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JAMA誌から
タムスロシンは白内障手術後の重症有害事象を増やす
術前14日以内の投与でリスクが2.33倍に

 前立腺肥大の治療にしばしば処方されるα1遮断薬タムスロシンが、白内障手術後の眼の重症有害事象リスクを高めることが示された。これまで、タムスロシンを使用している患者では白内障手術中に問題が起こる可能性が示されていたが、この薬剤と術後の有害事象の関係を示した研究はこれが初めてだ。カナダSt Michael’s病院Li Ka Shing Knowledge InstituteのChaim M. Bell氏らの報告で、詳細はJAMA誌2009年5月20日号に掲載された。
 
 前立腺肥大と白内障は男性高齢者に広く見られる病気だ。タムスロシンが作用するα1a-アドレナリン受容体は虹彩散大筋にも存在するため、術中に瞳孔散大を妨げ、Intraoperative Floppy Iris Syndrome(IFIS)を引き起こす可能性がある。IFISは縮瞳型症候群の一種で、術中の虹彩の弛緩と膨張、進行性の縮瞳、虹彩の手術部位への脱出などを特徴とする。IFISのリスクについてはすでに警告されているが、タムスロシンの影響は術後にも及ぶ可能性がある。

 白内障手術を受ける男性の1~5%がタムスロシンを使用中の患者であるという報告があるにもかかわらず、術後有害事象とタムスロシンの関係については明らかではなかった。また、タムスロシン以外のα1遮断薬にも同様のリスクがあるのかどうかは評価されていなかった。

 そこで著者らは、術後有害事象に焦点を当てて大規模な集団ベースの後ろ向き研究を行った。カナダのオンタリオ州の3つの管理データベース(外来処方データベース、健康保険プランデータベース、住民登録データベース)を用いて、2002年4月1日から2007年6月16日までに同州内で白内障施術を受けた66歳以上の男性全員(9万6128人)の情報を得た。

 手術の翌日から14日目までに重症有害事象複合イベント(網膜剥離、眼内レンズの脱落またはレンズ断片の脱落、または眼内炎)が見られた患者をケースとし、ケース1人につき、年齢、担当外科医、手術を受けた年がマッチするコントロールを4人まで選出した。

 これら有害事象複合イベントのリスクを、手術前1年間にタムスロシンを使用した男性群、他のα1遮断薬(タムスロシンよりはα1受容体に対する選択性が低いアルフゾシンドキサゾシンプラゾシンテラゾシン)を使用した男性群と、これらを使用していない男性群の間で比較した。

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