肥満者に対し、腹腔鏡下にルーワイ吻合での胃のバイパス手術を行うと、β細胞からのインスリン分泌を促すペプチドGLP-1の分泌能力が改善するという意外な結果が明らかになった。ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会(ADA2009)の一般口演で6月6日、米California大学のGuilherme M.Campos氏が発表した。
以前から、胃のバイパス手術を行うと体重が減少し、糖代謝が改善することが複数報告されている。だが、糖代謝の改善は食事制限の結果として生じているとの見方もあった。Campos氏らは、バイパス手術とそれに伴う食事制限を行う群と食事制限のみを行う群に分けて、バイパス手術による糖代謝の改善効果を検討した。
対象は、糖尿病とは診断されていない重度の肥満者22人。対象者をバイパス手術とそれに伴う1日800kcalの食事制限を行う群(12人)と1日800kcalの食事制限のみを行う群(10人)に分け、試験開始前と開始15日後に血糖値や膵臓ホルモン分泌などを計測した。試験開始時に、両群の背景に違いはなかった。
その結果、血糖の日内変動を示すM値は、両群とも試験開始前と比べて有意に減少した(p<0.01)。体重変化は、バイパス術群が9.9kg減少したのに対し、食事制限群は8.2kgの減少で、有意差はなかった(p=0.11)。このうち脂肪減少の割合は、バイパス術群40%、食事制限群30%だった。空腹時血糖値やインスリン抵抗性指数を示すHOMA-IRも、両群ともに改善傾向がみられた。
血中遊離インスリン濃度をみたところ、バイパス手術群では試験開始前に比べ、有意な減少が認められた(p<0.01)。一方、食事制限群では差は認められなかった(p=0.39)。また、食事負荷試験を行ったところ、バイパス手術群でGLP-1分泌の著しい増加がみられた(p<0.01)。
Campos氏は「短期間の観察において、バイパス手術群ではインスリンクリアランスの改善が認められ、食事制限だけでは説明できない効果が示唆された。なぜGLP-1の分泌が改善するのか、現在そのメカニズムを検討中である」と述べた。
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