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JAMA誌から
入院患者への制酸薬投与で院内肺炎が1.3倍
米国での前向き薬剤疫学コホート研究の結果

 近年、制酸薬の使用が増加している。特に、入院患者に対する投与が増えているが、それらの多くは適切な適応とは言いがたい状況だ。米国Beth Israel Deaconess Medical CenterのShoshana J. Herzig氏らは、前向きの薬剤疫学コホート研究を行い、入院患者に対する制酸薬の投与が院内感染肺炎のリスクを1.3倍に高めること、リスク上昇はプロトンポンプ阻害薬PPI)で有意であることを示した。詳細は、JAMA誌2009年5月27日号に報告された。

 これまでに、外来患者を対象とする研究で、制酸薬使用者には市中肺炎リスクの上昇が見られること、リスク上昇は使用開始直後が最も大きいことが示されている。

 著者らは、入院後に制酸薬を処方される患者が多いこと、入院患者は院内感染のリスクにさらされているにもかかわらず、入院患者の院内感染と制酸薬の関係を調べた前向き研究がないことから、このコホート研究を実施した。

 2004年1月から07年12月の間に、ボストンの都市部にある大規模な大学病院1カ所に3日以上入院した18歳以上の全患者を分析対象とした。集中治療室への入院があった患者は除外した。

 これらの患者について、PPIまたはヒスタミン2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)の処方の有無と処方期間を調べて、制酸薬の使用状況を明らかにした。

 主要アウトカム評価指標は、制酸薬使用患者と非使用患者の、ICD-9-CMに基づく院内肺炎の罹患率に設定。

 交絡因子は、制酸薬使用の予測因子と院内肺炎の危険因子とし、性別、人種、入院した季節と曜日、入院中に受けた治療、入院のタイプ(待機的または緊急)、入院日数、消化管出血、悪心と/または嘔吐、特定の種類の薬剤の処方、併存疾患等に関する情報を得た。

 入院は計13万6529件だった。条件を満たしたのは6万3878件の入院で、患者数は4万2093人だった。平均年齢は54歳、2万3801人(37%)が男性だった。

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