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【新薬】インスリングルリジン
アピドラ:3剤目の超速効型インスリン製剤

2009/06/25
北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

 2009年6月19日、超速効型インスリアナログ製剤インスリングルリジン(商品名:アピドラ注ソロスター、同注カート、同注100単位/mL)が薬価収載と同時に発売された(製造承認は4月22日)。適応は「インスリン療法が適応となる糖尿病」である。通常、成人では、1回2~20単位を毎食直前に皮下注射する。

 現在、糖尿病治療では、食事・運動療法とともに、薬物療法が中心的役割を担っている。薬物療法で使用される薬剤としては、2型糖尿病に使用されるSU剤をはじめとした経口血糖降下薬と、1型と2型のどちらにも使用される各種のインスリン製剤がある。

 インスリン製剤の中でも、近年になって登場した超速効型インスリン製剤は、作用発現までの時間が15分以内と速く、作用時間が約2時間と短いのが特徴である。食直前の投与で、食後の血糖値上昇のみを効率的に抑制できる。現在、超速効型インスリン製剤としては、インスリンアスパルト(商品名:ノボラピッド)、インスリンリスプロ(商品名:ヒューマログ)の2製剤が使用されている。

 今回、発売となったインスリングルリジンは、これらに続く3剤目の超速効型インスリン製剤である。遺伝子組み換え技術により、ヒトインスリンのB鎖3位のアスパラギンをリジンに、B鎖29胃のリジンをグルタミン酸に置換することで、単量体の安定性を高め、単量体から二量体、二量体から六量体への会合形成を抑制し、注射後の速やかな血中への移行と、血中からの速やかな消失を実現している。また、このアミノ酸置換により単量体として安定的に存在できることから、他剤には安定化のために配合されている亜鉛を、本剤は含有していない。海外では、2004年4月に米国で承認されて以降、現在までに80カ国以上で承認されている。

 インスリングルリジンの登場により、超速効型インスリン製剤の選択肢が増え、これまで以上に患者個々の病態に合ったインスリン療法が可能になるものと考えられる。ただし投与時には、ほかのインスリン製剤と同様に、低血糖について十分に説明し、発現時の対処法を含めて患者にしっかりと理解させることが必要である。

 なお、処方・調剤に当たっては、発売された3剤形の違いをきちんと理解しておくようにしたい。具体的には、「ソロスター」は、薬剤が充填されたディスポーザブル型(使い切り型)のペン型注入器製剤であり、「カート」は、カートリッジ交換式のペン型注入器「イタンゴ」に装填するカートリッジ、「注100単位/mL」は、バイアル製剤である。

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