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新外来診療棟オープンを機に完全電子カルテ化---信州大学医学部附属病院
1200台に及ぶ情報端末の全体運用最適化へ

2009/07/14
増田克善

 2009年5月に外来診療棟竣工で再開発事業を終了した信州大学医学部附属病院は、これを機に第5期病院情報システムを稼動させ、全面的な電子カルテ化に移行した。新病院情報システムは、電子カルテシステムの新バージョンへと移行したのをはじめ、インフラの全面的な刷新、全医療情報端末の入れ替えと運用管理の最適化などの仕組みを取り入れた。




●新外来診療棟オープンに合わせて新病院情報システムを稼動


 長野県の医療における最後の砦を自認し、さまざまな急性期疾患や難治性疾患に対して高度な医療を提供している信州大学医学部附属病院(以下、信州大附属病院)は、2004年の中央診療棟の整備に続いて、再開発事業の最終段階である新外来診療棟を2009年5月にオープンした。地上5階・地下1階建ての新外来診療棟は、中央部分を吹き抜けにし、その吹き抜けに面した各階の両側のスペースに各科診療受付と待合いスペースを配置。広い吹き抜け空間が、明るくオープンでゆったりとした雰囲気を作り出している。


医療情報部副部長の坂田信裕氏

医療情報部副部長の坂田信裕氏

 この新外来診療棟のオープンに合わせて稼動したのが、第5期病院情報システムだ。これまで構築してきた病院情報システムの課題は、各部門の個別最適で作られていたため、部門システム間の連携が十分でなかったことだという。「新病院情報システムは、中核となる電子カルテシステムを含む約40のシステムが連携して全体を構成していますが、診療現場からは1つのシステムとして見えるよう全体最適を図ることに主眼を置きました。特に電子カルテシステムは、同じシステムベンダーが導入している他大学と共通化したシステムとすることによって、信頼性と高い性能を確保し、また、部門システムとの連携性を高めることにも重点を置きました」。新病院情報システム開発プロジェクトの中心的役割を担った医療情報部副部長の坂田信裕氏は、新しい病院情報システムの開発コンセプトをこう述べる。

 新病院情報システムで具体的に大きく変わった点は、全面的な電子カルテ化への移行とフィルムレス化、それらに伴って基盤部分であるサーバやクライアント端末、ネットワークなどインフラの全面的な刷新である。前期(第4期)システムではフルオーダリング化を実現し、同時に電子カルテを全病棟と一部の外来診療で構築していた。これを、新外来診療棟の完成に合わせてすべての外来診療に展開し、全診療科で電子カルテ化を実現した。病院情報システムの主要システムである電子カルテシステムは、富士通のHOPE/EGMAIN-EXから最新のHOPE/EGMAIN-GXへリプレースしている。

 第5期システムの最大の課題は、医療情報サービス向上のために信頼性・可用性の高いシステムインフラを構築することであった。病院情報システムのコアとなるサーバには信頼性の高いIAサーバを導入して二重化したほか、部門系サブシステムのサーバをブレードサーバにリプレースし、障害復旧時間の短縮を図った。「従来の部門系サーバはラック型のユニットサーバを積み上げており、サーバがハードウエア的に故障した際の復旧までの必要な時間が問題となっていましたが、ブレードサーバにしたことにより、障害が起きたブレードを容易に入れ替えることができるため、以前に比べ短時間での復旧が可能になりました」(坂田氏)という。

運用管理の最適化をめざした情報端末を整備

診察室には医用画像用と電子カルテ用のディスプレーが各1台

診察室には医用画像用と電子カルテ用のディスプレーが各1台

 インフラの刷新という点では、従来のシステムでは、約900台の医療情報端末を管理していたが、外来診療の全面的な電子カルテ化に伴って、今回は端末数が約1200台に増加した。これらの医療情報端末のほぼ大半をインテルのクライアント管理技術「インテルvProテクノロジー」を実装したPCを採用し、PC運用ソフト「HOPE/瞬快」を使って、医療情報端末の運用管理工数の削減を図ったことが特筆すべき点といえよう。

 全面的な電子カルテ化に移行すると、医療情報端末においても安定した稼動が必須条件になる。そのためのリスクヘッジを十二分に考慮した運用管理は最重要課題といえるが、1000台を超える端末を運用管理する負荷は非常に大きい。例えば、端末のソフトウエアの更新をとってみても、セキュリティパッチの適用、セキュリティソフトの定義ファイル更新、電子カルテシステムのマスターデータの更新など管理すべき作業は多く、運用担当者の負担は一般的に台数が多くなればなるほど増加する。


医療情報部/医療情報支援室の船田徹氏

医療情報部/医療情報支援室の船田徹氏

 「旧システムの環境下でも、全端末のマスターデータの更新などは可能であったが、管理者権限でソフトウエアを更新しなければならない場合、サーバとの整合性をとるために一斉にアップデートする緊急的な場合などは、従来は人海戦術で1台1台の現場に赴いて更新作業する場合もありました」と、医療情報部医療情報支援室の船田徹氏は新システム移行前の、運用管理作業の繁雑さをこう振り返る。

 また、利用者からのヘルプデスクへの問い合わせや障害が発生したときの電話対応では端末状況がつかめないことも多く、現場に駆けつけるためには時間がかかってしまい、結果としてユーザーを待たせてしまうなど、ユーザーサポート業務に多くの工数と時間がかかるという課題も旧システムでは抱えていた。

電源オフ時でもリモートで資源配布

 インテルvProテクノロジーとHOPE/瞬快を使うことによって、リモート操作で端末を再起動させたり、電源のオン/オフが可能になる。これにより、夜間の外来診療端末や病棟端末の電源状態を問わず、ソフトウエアの更新作業が可能になる。「管理者権限でアップデートしなければならないような場合の作業負荷軽減はもちろん大きいですが、通常の更新作業においても、リモートで自由に端末をコントロールできるようになるため、資源配布の自由度が高くなり、それぞれの端末環境に応じて対処できる幅が拡がったことのメリットは大きいといえます」と坂田氏は指摘する。


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