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BMJ誌から
急性咳嗽への抗菌薬投与は回復を促進しない
欧州13カ国で成人患者への処方頻度と回復への影響を調査

 欧州では国ごとに抗菌薬の処方頻度に大きな差がある。その理由は臨床症状の差にあるのかどうか、また、抗菌薬処方により患者の回復が促進されるかどうかを調べた研究で、抗菌薬の多用に疑問を投げかける結果が得られた。英国Cardiff大学のChristopher Butler氏らが、BMJ誌2009年6月27日号に報告した。

 抗菌薬耐性は国際的な問題になっており、抗菌薬の不必要な使用は、患者に有害事象をもたらし、耐性菌の選別を加速すると考えられている。

 著者らは、欧州各国において抗菌薬が適切に処方されているかどうかを検証すべく、急性の咳を呈した患者に対する抗菌薬の処方頻度を調べ、それらの薬剤が回復に与える影響を評価した。

 ベルギー、フィンランド、スペインなど欧州13カ国の14都市のプライマリケア研究ネットワークにおいて、2006~07年の秋冬に、以下の条件を満たす18歳以上の患者を登録した:急性咳嗽または咳嗽の増悪を主訴とする、下気道感染が疑われる、症状の持続期間が28日以下、症状が現れて初めての受診である、診療時間内の受診である。下気道感染でプライマリケアを訪れる一般の患者を代表するよう、組み込み基準を緩やかにした。

 主要アウトカム評価指標は、医師による抗菌薬処方と症状の重症度に設定。

 一般医(GP)または診療看護師(NP)が、患者の病歴、症状、合併症(糖尿病、慢性肺疾患、心血管疾患)、臨床所見、治療(抗菌薬の処方も含む)と介入に関する情報を症例報告用紙に記入した。

 咳、痰、息切れ、喘鳴、鼻炎、発熱、胸痛、筋肉痛、頭痛など14の症状の有無を評価し、症状があった場合にはそれぞれについて、軽症、中等症、重症に分類した。痰の色は、無色、白色、黄色、緑色、血痰のいずれかを記録した。14の症状のうち、咳は99.8%の患者に見られたため、これを除いて13の症状と痰の色、体温、年齢、合併症を抗菌薬処方の交絡因子候補と見なし、階層的ロジスティックモデルを用いて各ネットワークの処方を分析。全体平均と比較した各ネットワークのオッズ比を求めた。

 患者にも症状記録用紙を渡し、回復まで、または28日目まで、13の症状のそれぞれについて7段階(なし~最悪)で毎日記録するよう依頼した。

 重症度スコアの時系列変化は、GP/NPの報告と、患者自身の報告の両方を用いて階層的ARMAモデルにより分析した。

 3402人の患者を登録。医師による症例報告は3368人(99%)について入手できた。患者自身による症状の記録は2714人(80%)から提出された。データが完全だったのは、2560人(75%)。年齢の中央値は45.0歳、37%が男性だった。

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