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「多数決=民主主義」の誤り

2009/07/21

 日本は、民主主義の国です。従って、物事を決める際には「多数決」による採決がよく使われます。日本の国権の最高機関である「国会」も、皆さんご存知の通り、衆議院・参議院ともに、原則として議決は多数決によります。われわれも、職場や日常生活の中で、多数決で物事を決めることが多々あります。

 もちろん、組織としての最終的な決定や判断はトップダウンで行われ、従業員はその指示の下で行動し、トップはその判断の結果に責任を持つのがあるべき姿でしょう。良い組織とは、トップダウンによる指示とボトムアップによる意見の具申の双方が、相互に好影響を与えるものです。ちなみに、役員会などで決まる「トップダウンの指示」も、従業員の意見としてまとめられる「ボトムアップの意見」も、多数決が一役を担うのが普通です。

 確かに、多数決は、民主主義的な組織運営を行う上で重要な手段です。しかし、「多数決=民主主義」といえるのでしょうか?「民主主義」を辞書で引いてみると、「人民が主権を持ち、人民の意志をもとにして政治を行う主義」とあります。また、「民主的」とは「どんなことでも一人ひとりの意見を平等に尊重しながらみんなで相談して決め、だれでも納得の行くようにする様子」とあります。つまり、決して「多数決=民主主義」ではないのです。

 「多数決」は一見、民主主義の考え方に基づいた優れた決め方ですが、絶対的なものではないと考えています。また、多数決を誤った方法で実施すると、禍根を残すことになります。なので私は、多数決で物事を決める際には、次の二つのポイントを強く意識しています。

 第一が、「多数決」を行う前に、十分に議論を重ねるということ。第二が、議論の中で、少数意見への配慮を踏まえた案を導き出すことです。そうすれば、少数派も、比較的協力的な姿勢で決定事項に従ってくれるものです。もちろん、このやり方でもうまく対処できない問題はありますが、リーダーが、「よく考え、よく議論すれば、議論無しにいきなり多数決を行うよりは、皆が納得できる結論に落ち着くのだ!」と強く信じることが、何よりも大切だと私は考えます。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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