日経メディカルのロゴ画像

BMJ誌から
急性腹痛で緊急性の高い症例を同定するには
超音波検査で陰性/判定不能の場合にのみCTを実施

 急性腹痛を訴えて救急部門を受診した成人患者の中から、緊急性の高い患者を検出するためには、どのような診断戦略が最適なのだろうか。この疑問を検証すべく、大規模前向き研究を行ったオランダAmsterdam大学医療センターのWytze Lameris氏らは、最も有効で放射線曝露も少ない方法は、超音波検査で陰性または判定不能となった患者にのみCTを実施する方法であることを明らかにした。詳細は、BMJ誌2009年7月4日号に報告された。

 救急部門を訪れる患者の5~10%は急性の腹痛を訴える。緊急性の高い患者を迅速かつ正確に同定することが必要だが、臨床症状と臨床検査の結果のみに基づいて判断すると、不要な治療を行うことになったり、治療が遅れたりする可能性がある。

 急性腹痛に対する画像診断として用いられることが多いのは、超音波検査とCTだ。これらの有用性は数多く報告されているが、多用すれば医療費が上昇する。CTには放射線被曝という問題もある。したがって、腹痛を訴える幅広い患者に適用できる、エビデンスに基づく診断戦略が必要とされている。

 そこで著者らは、不要な画像検査を減らしつつ、緊急性の高い患者を速やかに選別できる診断法を探すため、11通りのアプローチの精度とコストを比較する前向きの多施設試験を行った。

 緊急性の高い症例は、24時間以内に治療が必要な症例と定義した。

 オランダ国内の2つの大学病院と4つの大規模な教育病院の救急部門を急性腹痛により受診した患者を、2005年3月から21カ月間にわたって登録。組み込み条件は、18歳以上で、外傷性ではない腹痛が2時間以上5日未満持続している場合とし、妊婦、出血性ショックの患者などは除外した。

 1021人(平均年齢47歳、55%が女性)の患者を登録。75%が一般開業医から救急部門に紹介されてきた患者だった。救急部門で外科の研修医の診察を受けたのは、757人(74%)。264人(26%)は救急医療科の研修医の診察を受けた。研修医の臨床経験は平均25カ月だった(2カ月~8.7年)。

 全員が、診察と臨床検査を受けた後に、順番に、単純X線撮影(胸部立位、腹部仰臥位)、超音波検査、CT検査を受けた。その後6カ月間追跡した。

 超音波検査が放射線科の研修医により行われた患者は、582人(57%)。うち300人については放射線医の監督があった。放射線医による超音波検査を受けた患者は439人(43%)だった。

 CT検査については、放射線医の監督の下に放射線科の研修医が行った症例が299例(29%)、放射線医が行った症例は722例(71%)だった。

 診断終了後に671人(66%)が入院した。手術を受けた患者は483人。追跡期間中に14人が死亡していた。

 経験を積んだ医師が、その後6カ月間の追跡データを参考にして最終的な診断を行い、急性腹痛が急を要する状態だったか否かを判断した。

この記事を読んでいる人におすすめ