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飛岡的“医師不足”に関する検討(1)

2006/10/17

アムステルダムでは、町のあちらこちらに市場が立つ。これは切り花だけを扱う店。ほかに鉢物や球根、種などを扱う店もある。同じ市場には、チーズ、果物から衣類まで、あらゆる日常生活用品の店が並ぶ。

 「日本の医師不足」の話が、竹中郁夫先生と本田宏先生のブログで進んでいる。話を要約すると「総医療費抑制政策・医療制度改革により、病院の医師の仕事量(雑用を含む)が増え、厳しくなる仕事量・責任に見合わない給与も抑制された。患者意識の変化により、医療は患者のための医療サービス業であると認識されだした。医師に対する尊敬・感謝は減り、反対に過密スケジュールによって起こる単純な医療ミスに対する医療訴訟が増えている。このため、病院に勤務する医師の、臨床に対する使命感・情熱が燃え尽きて、やってられない状態になり、病院から立ち去っている」ということのようだ。

 立ち去った医師がどうしているかというと、診療所で開業医をしているようである。もちろん診療時間終われば、平和な家族団らんの時間が確保される。今まで、病院の専門科目だけに寡黙に精進していた専門医は能力が高いので、その気になれば開業医(一般医)に簡単になれるようである。私のように「一般開業医」を指向してきた人間からすると、羨ましい限りである。

 最近の患者の傾向は、小児科を例に取ってみると、市内の小児科開業医を「かかりつけ医」に持つ家庭が減少している。小児を持つ家庭は「共稼ぎ」が多いので、仕事から帰った夕方以降に子供の病状が気になる。だから、小児科開業医に相談するよりも、最初から総合病院の小児科を受診する傾向が強い。岡山市内の病院では、岡山市医師会小児科医会と、一部の総合病院が共同して、夕方よりの小児救急外来を、小児科開業医が手助けしているところもある。

 病院勤務医師が不足することについて、厚生労働省では、社会問題になる1年前、2005年2月より検討を始めており、最終報告書として
「医師の需給に関する検討会報告書」(2006.7.28)

が提示された。さすが、厚生労働省は先見の明がある。

 この「医師の需給に関する検討会議」の資料・議事録は厚労省のHPに掲載されている。トップページで「医師の需給に関する検討会」をキーワードに検索すれば簡単に出てくる情報なので、公開された情報だと理解している。そこで、資料と議事録を時系列に並べて整理してみた。いずれも「資料」「議事録」の文字をクリックするとそこへ飛んでいくので、ぜひご覧いただきたい。

 ・第1回医師の需給に関する検討会(2005.2.25) 資料議事録
 ・第2回医師の需給に関する検討会(2005.3.11) 資料議事録
 ・第3回医師の需給に関する検討会(2005.4.6) 資料議事録
 ・第4回医師の需給に関する検討会(2005.4.25) 資料議事録
 ・第5回医師の需給に関する検討会(2005.5.19) 資料議事録
 ・第6回医師の需給に関する検討会(2005.6.13) 資料議事録
 ・第7回医師の需給に関する検討会(2005.6.30) 資料議事録
 ・第8回医師の需給に関する検討会(005.7.20) 資料議事録

「医師の需給に関する検討会中間報告書」(2005.7.27)
 ―特定の地域及び診療科における医師確保対策のための緊急提言―

 ・第9回医師の需給に関する検討会(2005.10.28) 資料議事録
 ・第10回医師の需給に関する検討会(2005.12.12) 資料議事録
 ・第11回医師の需給に関する検討会(2006.2.8) 資料議事録
 ・第12回医師の需給に関する検討会(2006.3.27) 資料議事録
 ・第13回医師の需給に関する検討会(2006.5.29) 資料議事録
 ・第14回医師の需給に関する検討会(2006.6.28) 資料議事録
 ・第15回医師の需給に関する検討会(2006.7.19) 資料議事録

 ・「医師の需給に関する検討会報告書」(2006.7.28)

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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