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Lancet誌から
妊婦の新型インフル感染疑いには早期治療が重要
米国の症例分析の結果

 米疾病対策センター(CDC)が、米国で新型インフルエンザウイルス(ブタ由来A/H1N1インフルエンザウイルス;S-OIV)感染の流行が拡大した当初2カ月間における妊婦の感染例について分析した結果、感染が疑われる妊婦に対しては早期に治療を開始する必要があることが示唆された。CDCのDenis J Jamieson氏らの報告で、詳細はLancet誌電子版に2009年7月29日に掲載された。

 季節性インフルエンザの感染においては、妊娠していない女性に比べ妊婦の合併症罹患や死亡のリスクが高いことが示されている。今回のパンデミックでも、米国内で2番目に死亡した感染者は妊婦だった。流行当初、妊婦に対するS-OIV感染の影響はほとんど報告されていなかったが、妊婦が感染すると重症化する恐れがあると考えたCDCは、妊婦の感染例に関するサーベイランスを強化していた。

 著者らは今回、米国内での流行開始から1カ月間(4月15日から5月18日)に報告された妊婦の新型インフルエンザ感染症例(確定例+疑い濃厚例)について、また、当初2カ月(4月15日から6月16日まで)に報告された妊婦の死亡例について概説した。

 今回、発症率や入院率の算出に当たっては、2007年の米国人口調査の結果から生殖年齢(15~44歳)の女性の数を得るとともに、妊娠率、流産率などを利用して分析対象期間に全米で妊娠していたであろう女性の数を推定する方法を用いた。

発症率は妊婦10万人当たり1.0と推定
 2009年4月15日から5月18日までの間に、米国内13州で、31人の確定例妊婦、3人の疑い濃厚例妊婦が報告された。年齢は15歳から42歳(中央値は26歳)で、約半数がヒスパニック系であり、5人に1人は未産婦だった。34人中22人(65%)は妊娠初期または中期で、9人(26%)は妊娠後期だった。

 これらの妊婦のうち、発症前7日間に肺炎またはインフルエンザ様疾患の患者と濃厚接触があったのは11人(32%)。4人(12%)は発症前7日間にメキシコを旅行していた。疫学的関連が認められない患者が22人(65%)いた。

 基礎疾患については、7人(21%)に喘息歴があったが、治療薬を使用していたのは1人のみ。喘息以外の慢性疾患で治療中だった患者が2人いた。1人は妊娠糖尿病でインスリンを使用しており、もう1人は妊娠に気付かずに高血圧と甲状腺機能亢進症に対する治療薬を使用していた。季節性インフルエンザに対するワクチン接種を受けていたのは3人(9%)だけだった。

 確定例および疑い濃厚例の計34人の妊婦のうち、33人(97%)に発熱があり、32人(94%)はインフルエンザ様疾患(発熱と咳またはのどの痛みあり)を呈していた。発熱以外で多かった症状は、咳(94%)、鼻漏(59%)、のどの痛み(50%)、頭痛(47%)、息切れ(41%)、筋痛(35%)など。嘔吐(18%)と下痢(12%)は少なかった。肺炎が疑われた患者は6人で、胸部X腺撮影により診断が確定した患者は4人だった。

 これらの症状は、妊娠していない生殖年齢の女性や一般の人々とほぼ同様だったが、息切れのみ妊婦に有意に多かった。妊娠していない生殖年齢の女性と比較したリスク比は1.7(1.0-2.7)、一般集団と比較したリスク比は2.3(1.5-3.6)となった。

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