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Lancet誌から
抗精神病薬の長期使用は統合失調症患者の死亡を低減
第2世代の薬剤では影響の大きさにばらつき

 全世界で数百万人の統合失調症患者が抗精神病薬を使用している。だが、長期的な使用が死亡率にどのような影響を及ぼすのかは明らかではない。そこで、フィンランドKuopio大学のJari Tiihonen氏は、第2世代の抗精神病薬が登場する前後の11年間の統合失調症患者の死亡率を調べた。この結果、抗精神病薬の長期使用は統合失調症患者の死亡リスクを低減すること、また、第2世代の薬剤では死亡リスクに対する影響の大きさにばらつきがあることが明らかになった。詳細は、Lancet誌電子版に2009年7月13日に報告された。

 重症の精神疾患患者の余命は一般集団に比べ約25年短いという報告があるが、死亡の6割は心血管疾患や肺疾患などに起因する自然死だ。

 統合失調症患者においては、1976年から95年にかけて心血管死亡が増加、特に91~95年に急増したと報告されている。また、一般集団と統合失調症患者の死亡率の差が1970年代から1990年代にかけて拡大したというメタ分析の結果も公表されている。

 患者死亡と患者の心血管死亡の増加が第2世代の抗精神病薬の登場と時を同じくしていることから、これらの薬剤の有害事象と統合失調症患者の死亡の間に関係が存在するのではないかと疑われるようになった。

 著者らは、抗精神病薬の使用が統合失調症患者の死亡に与える長期的な影響を調べようと考え、フィンランドの各種データベースから情報を抽出した。

 まず、1973年1月から2004年12月の間に同国で入院治療を受け、退院登録(NHDR)にデータが残されていたすべての統合失調症患者6万6881人(男性3万803人、女性3万6078人)に関する情報を得た。追跡開始時の平均年齢は51歳だった。

 死亡と死因に関する情報はフィンランド統計から入手した。

 抗精神病薬として、第1世代の薬剤の中で使用頻度が高かった3剤(ペルフェナジンチオリダジンハロペリドール)と、第2世代の薬剤の中で使用頻度が高い4剤(クロザピンオランザピンリスペリドンクエチアピン)に関する情報をフィンランド社会保険協会から入手した。

 追跡期間の平均は8.6年。薬物療法歴がなかった患者1万8914人の追跡期間の平均は7.8年で、薬物療法歴があった4万7967人の追跡期間の平均は8.9年だった。

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